劇場公開日 2011年12月23日

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「落語の世界を借りた川島監督の死生観」幕末太陽傳 CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5落語の世界を借りた川島監督の死生観

2014年11月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

川島雄三監督の最高傑作。全編を通して落語の噺がちりばめられており、それが実に巧妙に作品を転がしているだけに、落語好きには溜まらない。
といっても、落語噺をよく知らなくても十分に楽しめる。遊郭に「居残り」をしながら、遊郭の若衆どころか男芸者顔負けに振る舞い小遣い稼ぎをする主人公の活動を中心に、日活「太陽族」を維新の志士としてうまく絡め、その上で監督の死生観までをも盛り込んで成立させている。主人公がラストシーンで言う「地獄も極楽もあるもんか。俺はまだまだ生きるんだ」という台詞は、物語の進行と同時に進んでいると思わせる主人公の病状の深刻さに抗うように、しかしながらどこか楽観しているような心情を現す。そして最後に主人公は、品川の海沿いの道を走り、どこかに逃避していく。

50年を経って、なお十分に見応えのある作品だ。また、デジタル修正版は初見だったが、非常に見やすくなっている。

なお、作中に使われる落語は「居残り佐平次」をベースに、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などのエピソードがちりばめられ、「文七元結」「付き馬」「お初徳兵衛」「夢金」などの設定や一場面も活用されている。

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