「大予言」テイク・シェルター 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大予言
悪夢で大災害発生の恐怖に駆られた男が、シェルター作りに取り憑かれていく…。
ジャンル的にはサイコスリラーとなっているが、狂気と不穏の人間ドラマだと感じた。
主人公が見る悪夢や幻覚は、夢か真か分からない不条理さを感じさせ、それを表現したCGは巧い使われ方。
「MUD マッド」も期待のジェフ・ニコルズは今後も注目の監督だ。
主人公カーティスを演じたマイケル・シャノンは、この映画の素晴らしい立役者。
「レボリューショナリー・ロード」などで危なっかしい狂気を孕んだイメージのシャノンなので、今回も相当狂った役柄かと思いきや、狂気を内面から滲み出させる抑えた複雑な演技を見せ、見事。きっとカーティスは、シェルター作りに取り憑かれていなかったら、謙虚で家族思いの好人物である事すら感じさせる。感情を爆発させたシーンは、迫真の演技で見る者を惹き付ける。
メジャー作品では「マン・オブ・スティール」のような悪役が定番になりそうだが、こういったインディーズ作品では性格俳優の道をどんどん突き進んで行って欲しい。
妻役ジェシカ・チャスティンの存在と美しさに救われる。
カーティスは果たして災害を予知出来たのか、それともただの偶然だったのか。
明確に答えを提示しない結末は絶妙。
中盤の母とのエピソードが興味深い伏線になっている。母から息子へ、息子からその娘へ…。
見ていたら、藤子・F・不二雄氏のSF短編のある話を思い出した。
著名な予知能力者が居たが、ある日突然公の場から姿を消した。弟子が訪ねると、部屋の中に引き籠もっていた。予知能力者は弟子に新聞のスクラップ記事を見せる。それには、自然破壊、大災害、殺傷兵器開発などの記事。予知能力者は言う。これだけ世界の終わりが提示されているのに、何故世界は平気な顔をしていられるんだ、と。予知能力者は孫を抱き上げて言う。もうお前に予知してあげる未来は無いんだよ、と。
この漫画のラストも、映画のラストも、いつ訪れるか分からない世界の終末を予感させるものであった。