「最後に残された感覚を失うとき」パーフェクト・センス REXさんの映画レビュー(感想・評価)
最後に残された感覚を失うとき
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『コンテイジョン』や『アウトブレイク』のような、科学的な感染ものとは一線を画す映画。
主役は感染病研究者ですが、蘊蓄を語る場面はほぼ無いですし、次々襲う奇病に対しては全くの無能。奇病SOSは脳の病気だと思わせますが、脳外科医なども一切登場しません。
そういったことよりも、人の五感の重要性を詩的に描き、徹底的に主役二人の周囲の世界だけを丹念に描くことで、何気ない生活の美しさを観る者に再発見させようとしています。
失っていく五感は一つずつ感情に結びついており、最後に残されたのは愛したい、愛する人に触れたいという欲求。
触感さえ失ったときに、側にいて欲しい人がいないなんて、暗闇に一人いることと同じで、とても悲しく恐ろしいことでしょうね。
映画からは、時を惜しみ、今を大事に生きてくださいというメッセージを感じました。
『ブラインドネス』など似たような感染パニックものは分断や暴力を、『ワールド・ウォー・Z』などゾンビ系ものは恐怖を描く類なので、徹底して喪失と慈しみを描いたこの作品は、感染ジャンルの中では稀有な存在といえます。
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