「ひたすら重く、酷い映画。」灼熱の魂 梅薫庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすら重く、酷い映画。
原作はレバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲「焼け焦げる魂」。去年日本でも初上演された。
時は現代、初老の中東系カナダ人の女性が亡くなる。彼女は自分の双子の子供たち、姉弟にも、自分の心の中を見せず生きてきた。が、二人には遺言を遺した。それは、今まで知らされていなかった家族、実の父と兄へ宛てた二通の手紙だった。彼は、その手紙を届けるため、父兄を捜すうち、母親の壮絶無比な過去を知ることとなる。
映画では具体的に描かれていないが、背景として1970年代、中東レバノンでおきた内戦をモデルしている。
宗教、民族、イデオロギーが混沌とした状態にあったなか、それらがもたらす暴力と憎悪の連鎖、そしてそこに湧き上がる人間の業をギリシャ悲劇の型を借りてあぶり出していく。
母親は自分な壮絶な過去を語ることで、子供たちの世代に悪夢の連鎖を残さないとでも思ったのだろうか。だが、結果として残されたのは、彼らの心に深く沈む重荷だけである。それはこの映画を観た観客も同様。
しかし、それでも人間は生きていかなければならない。それがまさに。人間の業、だ。
1月17日 日比谷・TOHOシネマズシャンテ
コメントする