「【”1+1=1。”衝撃的な母と双子の子供の関係性を描いた作品。母として過酷過ぎる経験をしながらも、実の息子に対する”赦し”が描かれている。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督って、初期から凄かったんだ!。】」灼熱の魂 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”1+1=1。”衝撃的な母と双子の子供の関係性を描いた作品。母として過酷過ぎる経験をしながらも、実の息子に対する”赦し”が描かれている。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督って、初期から凄かったんだ!。】
■双子の姉弟、ジャンヌとシモンの母・ナワルが、ある日プールサイドで原因不明の放心状態に陥り息絶えた。
ナワルの遺言を知らされたジャンヌとシモンは、2人が存在すら知らされていなかった父と兄にナワルの手紙を渡すため、母の祖国を訪れることになる。
ジャンヌは、父への。シモンは兄への手紙を持って・・。
◆感想<Cautin!内容に思いっきり触れています。>
・今作では、ナワルが且つて過酷な生活を送っていた国の名は明らかにはされない。だが、拙い知識と状況を見ると、レバノン内戦だという事は容易に気づく。
・ナワルが、カナダに移住してからジャンヌとシモンに対し、余り愛情を示さなかった理由も、観ていれば良く分かる。
■若き、ナワルがレバノン内戦を主導した愚かしき政治家に対し、命を張って行った事。
だが、彼女はそのために“唄う女”として獄に繋がれる。
そこに現れたのは、彼女が且つて産んだ踵に三つの刺青を入れた男であった。
その男が、彼女に対して行った性的拷問。
だが、ナワルは命を絶つことなく、双子の子供を出産する。
<この辺りは、観ていてとてもキツイが、ナワルの複雑な気持ちを考えると、私は彼女の選択を肯定する。>
・そして、ナワルは亡くなった後、ジャンヌとシモンにそれぞれ遺言を残す。
【ジャンヌには、”父”を探してくれ。シモンには”兄”を探してくれ】
良く観ていれば分かるが、”父”=”兄”なのである。
■そこには、ナワルの実の息子に対する”赦し”と、ジャンヌとシモンに対しては、ナワルが経験した非人道的な行為を認識して欲しいという想いが込められているのである。
<今作は、前半はミステリー要素を絡めながら、そして後半は独りの女性が経験した想像を絶する真の物語が描かれる。
だが、その根底には母親としての、過酷な経験をしながらも、実の息子に対する”赦し”が描かれているのである。
今作は、ヒューマンミステリーでありながら、人間の業と赦しを描いた逸品である。>