「1+1=1の悲劇」灼熱の魂 bionさんの映画レビュー(感想・評価)
1+1=1の悲劇
ラストに至るまでに、精神的に相当なカロリーを消費したが、エンディングでは精魂尽き果ててしまった。
母親であるナワル・マルワンの回想が始まるや否や、名誉殺人らしきシーンがスクリーンに映り、中東における一族の掟の非情さに衝撃を受ける。ナワルが過酷な半生を送ったことは、予告編でほのめかされていたが、想像をはるかに超える苛烈さで、生かされた事自体が罰ではないかと思える。
多くの宗教と部族がモザイク状態で混在しているレバノン(劇中では、ぼかされている)が抱える問題をナワルがすべて背負わされている。民族間対立にととまらず民族浄化にまで激化した内戦、敵対勢力の子供をさらって洗脳教育を施して戦士に仕立て上げる民兵組織、徹底した拷問を行う収容所。この物語の結末を聞くのが恐ろしい。
劇場の集中できる環境で打ちのめされて、「赦す」ということは何であるかを理解できる糸口を見つけることができた。
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