「予備知識が必要」アンネの追憶 eigakabosuさんの映画レビュー(感想・評価)
予備知識が必要
「アンネフランク真実の物語」(2001)と併せて観ました。
データがないのでここに書きますが、「アンネフランク真実の物語」は三時間に渡り、アンネフランクや周囲の人々の人物像が詳しく描写されています。アンネはおしゃべりで無邪気で感受性が豊かな作家を夢見る女の子。裕福であった幸せな生活や、隠れ家での極限状態に置かれた人間同士の確執や葛藤、収容所での過酷な労働や生活を丁寧に丁寧に描いています。(確かめようがないので)恐らくですが、限りなくノンフィクションに近い作品なのではないかと思います。
アンネの日記に描かれなかった隠れ家生活以外の部分も(想像に過ぎませんが)事実に忠実に、過剰な演出や脚色無しに描かれている、と言う印象でした。アンネ役の少女がアンネそっくり。何故データが無いのか不思議です。個人的には、「はっきり言って名作」でした。
そして、この「アンネの追憶」を、その直後に観ました。
印象としては、断片的でわかりづらい、いい意味でも悪い意味でも脚色が顕著で「映画的」な仕上がりでした。
アンネフランクの生涯を知ると言うよりは、アンネフランクという少女を通して、人間の善悪について問いかけてくる、哲学的な内容になっています。
悲惨であるはずの場面で流れる音楽があまりに美しい。調べてみると、ニューシネマパラダイス等で有名なエンニオモリコーネという作曲家の作品らしく、納得しました。
アンネ役の女優の可憐さに美しい音楽が、悲しい物語との対比で悲壮感を更に強いものにします。本当に胸が痛かった。
この映画では、アンネの想像力が豊かな性格が肯定的に描かれています。過酷な状況でも、豊かな想像力で幸せを見いだすことができるアンネ。「ライフイズビューティフル」に通ずる部分があります。
訴えてくるものも学ぶものも多い作品だとは思いますが、何分あまりに断片的過ぎて、元のストーリーを知らない人は流れに乗れないと思います。私はもともと「アンネの日記」部分しか知らなかったので、事前に「アンネフランク真実の物語」を鑑賞したり、ネットで色々読みあさったことは正解でした。
観て意味のない作品では決してないので、予備知識を入れてから観ることをお勧めします。ホロコーストの狂気は知っておくべき事実です。