劇場公開日 2012年2月4日

  • 予告編を見る

「観る者の心に優しく触れる、愛おしい趣向の数々」人生はビギナーズ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0観る者の心に優しく触れる、愛おしい趣向の数々

2018年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

幸せ

決してコミカルで賑やかな映画ではない。むしろ人生の機微や繊細さに満ちた物語という形容がふさわしいだろう。中心となるのは、ゲイであることをカミングアウトした高齢の父。それを機にガンでありながら表情をより豊かなものへ変貌させていく姿には、誰もが一種の憧れを抱かずにいられないはずだ。そんな父の姿、家族の肖像を散りばめながら、本作は息子であるユアン・マクレガーの視点で展開していく。フラッシュバックする記憶。母の面影。一歩踏み出せずにいる自分・・・。愛犬の気持ちが字幕付きで表示され、仮装パーティーではフロイトに扮し、ヒロインは自分の意志をサイレントで表現するなど、愛らしい趣向が盛りだくさん。あらゆる瞬間が観る者の気持ちに優しく触れ、心をふっと軽くしてくれる。誰もがビギナーズ。前に踏み出す勇気さえあれば日常は変わる。何よりも本作そのものが、一度きりの人生を思いきり楽しんでいるように思えてならないのだ。

コメントする
牛津厚信