「汚れっちまった悲しみに」デンジャラス・ラン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
汚れっちまった悲しみに
『トレーニングデイ』『アメリカン・ギャングスター』等、
最近ときどきド悪党なキャラを演るデンゼル・ワシントン。
本作もそんなデンジャー・ワシントン路線のサスペンスアクション。
まず見所は、手堅い出来のアナログなアクションかな。
本作のアクションシーンはカメラが激しく揺れる上、
画も被写体に対してかなり寄り気味なので、画面が見づらい。
しかしながら本作は、そうやってわざと観客の視界を狭める事で、
アクションシーンに生っぽさ——周囲の状況を把握する間も
ないほどの混乱や緊迫感——を与えているのだろう。
それと本作、ビビるくらいに銃声がでかい、重い。
やかましい!と言う方もおられるようだが、一発一発の重みを感じさせる方が
銃撃の恐怖が伝わってくるので個人的には好み。
また、アフリカという舞台設定も魅力的だ。
雑居ビル、プレハブの街、荒涼とした砂漠など、
見せ場が展開されるシチュエーションが独特で面白い。
ざらついた赤砂色の映像と相俟って、アフリカの熱く雑然とした空気が伝わってくるようだ。
物語的には『辺境の地』以上の意味は無いのだろうが、
アフリカを舞台に据えた事が本作に独特の“色気”を生んでいる。
ま、舞台がここで無ければ特徴に乏しい映画とも言えるのだけれど。
物語のキモである、主人公と謎のメモリの関係、
それを追うCIA内部の裏切り者の正体……
どちらの真相もあまりヒネリは無く、途中でこちらのド肝を抜く展開も無い。
勿体無いっすねえ、あれだけ実力派の役者さんが揃ってるのに、
誰もサスペンスに寄与してくれないんだもの。
だが逃避行を続ける内に、友情や連帯感とは少し異なる、
同種の人間に対する尊敬や同情のような感情で繋がれていく主人公コンビのドラマは泣ける。
デンゼル演じるフロストは長く過酷なスパイ活動で感情が麻痺してしまっている。
人を殺す時はおろか、隣の人間が突然殺された時も、
旧友が殺された時すらも、殆ど表情を動かさない。
今や自分の利益の為にしか動かない冷血漢。
だが彼自身、無情な生き物になってしまった自身を悔いている。
野心と情熱を持った若者に昔の自分を重ね、
お前は俺のように汚れてくれるな、俺と同じ後悔はするなと諭す。
師弟関係にも似ているが、それよりも——父と息子の関係のようでした。
アフリカのように熱く、ドライに見えてウェットな物語。
僕はこれ、結構好きです。
<2012/9/8鑑賞>
きびなごさん、こんにちは。
コメントをありがとうございました。
このデンゼルもステキでしたね。
フロストの苦しみ、悲しみ、息苦しさが十分に伝わってきました。
主人公二人の関係は、見る者をホッとさせましたね。
ところで、≪汚れちまった悲しみに≫と歌う歌がありましたね。
何だか、懐かしく思い出しました。
それが、ぴったりの作品でしたね。
さすが!きびなごさん!!
剣心の配役、志々雄に伊勢谷友介さん、ぴったりですね。
こちらは、目だけの演技となりますから、目力のある伊勢谷さんは、うってつけですね。
大賛成です。
満島さんは女性ですので意外でしたが、それもありだわ!と思いました。
蒼紫には、玉山鉄二さんはどうでしょうか。
目の寂しさが、引き立つように思います。
あっ、もう止めますね。
非難怒号が聞こえてきました。