劇場公開日 2006年4月29日

「トト・ザ・ヒーロー」小さき勇者たち ガメラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0トト・ザ・ヒーロー

2020年6月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

楽しい

単純

萌える

シリーズ通算12作目。2006年の作品。
一年ずれ込んだが、ガメラ生誕40周年作。
昭和シリーズや平成三部作とは一切関連ナシ。本作のみの単品。
尚ガメラ映画は今のところ、本作を最後に作られていない。

事故で母親を亡くしたばかりの少年、透。
父親と再出発を始めたある日、不思議な卵を見付ける。
卵から産まれた小ガメに“トト”と名付け、育てるが、みるみる大きくなっていく。
トトは30年前、自爆してギャオスの脅威から人類を救ったガメラなのか…?
そんな時海難事故が続き、原因である怪獣ジーダスが現れる…。

見るのは劇場で観て以来。
初見時はどうしても平成三部作が好き過ぎたので、再びの昭和シリーズのような子供向けの作風チェンジが残念だった。
やはり平成三部作のようなシリアスでリアル志向の作風が良かった…。
が、時を経て改めて見ると、そんなに悪くはなかった。

子供向けと言われているが、昭和後期の『対バイラス』~『対ジグラ』(『対ジャイガー』を覗く)のような荒唐無稽の漫画ではなく、良質なジュブナイル・ファンタジー。
主人公の少年の成長、ぎこちない父子の関係、そして透とトトの交流…。
監督は特撮ヒーローを手掛けているが、脚本は特撮や怪獣モノを手掛けた事のない女性脚本家で、固定観念の無い物語作りである。

全く新しいガメラ映画だが、分かる人には分かるネタも。
トトがびっくりする“包丁”。これは言うまでもなく!
また、OPのガメラ対ギャオスは、本来『ガメラ3』でイリス戦の後に描かれる予定であった最終決戦。時間や予算の都合でカットされたが、本作のOPシーンとして上手く活かされた。

透役の富岡涼(この2006年の活動を最後に引退したらしい)の純真な演技もさることながら、やはり夏帆!夏帆!夏帆!
夏帆が可愛いッ!
隣の家の面倒見のいいちょっと年上のお姉さん。
でも、心臓が悪く、手術を控えている何処か儚げ…。
萌える~!
不器用な父親役の津田寛治、夏帆の父親役の珍しく優しい役所の寺島進、二人の父親も好演。

新怪獣のジーダス。
トカゲをベースに、人間を食らう凶暴な性格。
ギャオスを彷彿させ、トカゲがギャオスの細かくなった肉片を食べたとか、ギャオスの遺伝子が組み込まれ異常進化したとかの裏設定あり。
デザイン的にも“THE怪獣”。

特撮面は製作費推定15億円も掛けられながら、グンと低い平成三部作より斬新さや見せ場や特筆さに欠ける。
クライマックスは成長したトトとジーダスの決戦。特撮怪獣映画の醍醐味や、トトも火球やお馴染み回転ジェットを披露するも、前半のドラマ部分に比べ後半はちと平凡。今一つ盛り上がりにも欠けた。
他の方も書かれているが、トトを助ける為の子供たちの“リレー”も何故…??
…いや、それはあくまで私がもう穢れた大人だから。

これまでと比べずっと小さい。顔も子供のよう。
鳴き声も違うし、着ぐるみ感や作り物感も。
でも、魅力は変わらない。
まだ成長しきってない小さな身体で果敢に立ち向かっていく。
クライマックスも圧倒的劣勢でも立ち向かう。
そんなトトを子供たちは信じる。
トトはそんな子供たちの為に。

子供たちのヒーローであっても、守護神であっても、友達であっても。
これまで描かれてきた通り、長い眠りから覚め、再び復活する日が必ずやって来るだろう。

その日までーーー。
ガメラ!

近大