「もみじまんじゅうぅ」佐賀のがばいばあちゃん kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
もみじまんじゅうぅ
島田洋七による昭和30年代の自伝的ストーリー。高度成長期の頃の映画化という点で、なにかと『ALWAYS三丁目の夕日』と比較されますが、こちらは古行淳之介というもじりではなく、本物の吉行淳之介の妹である吉行和子が主演だ。
明弘少年は2人兄弟の弟。父親は原爆症で早くに亡くなり、母と三人暮らしなのですが、生活が苦しいため、佐賀のおばあちゃんのもとへあずけられることになった。佐賀に連れられていく方法も騙して拉致したようなもの。そしていきなりのホームシック。8歳だと当然です。
ようやくばあちゃんとの生活も慣れてきたかと思っても、「かあちゃんに運動会に来てもらいたい」と子供らしい願い。この運動会のシークエンスは自分の小学校時代を思い出してしまい、泣けてしまいました。楽しい昼食の時間だとか言われても、親が来ない子供は寂しいものです。「運動会のかけっこで順位をつけるな」といったバカな発言をする親もいるようですけど、そんなことより「親と一緒の昼食時間を無くせ!」と主張したいですね。劇中には弁当を交換してくれる優しい先生が登場しますけど、世の中いい先生ばかりではありませんから・・・
先祖代々明るい貧乏を目指すばあちゃんでしたけど、人生訓の宝庫のような人でした。生きることが素晴らしいといった想いが伝わってきます。剣道に憧れるけど金がないからと許されず、おばあちゃんの経済事情も察知できるようになった明弘は柔道ならと申し出るが許されず、「スポーツがしたければ走れ」と言われる。しかも靴は磨り減ってもったいないから裸足で!自分も貧乏だったけど柔道は許されたなぁ~などと、すべて自分の幼少時代を思い出しながらの鑑賞になりました。学校の先生にしろ、緒方拳演ずる豆腐屋さんにしろ、周りも(人に気づかれない)優しい人ばかりだったし、すべて島田洋七の人生のこやしになっていたんだと感じられ、ちょっと羨ましくも思えてしまいます。
演技ではハズレのない山本太郎はもちろんよかったし、工藤夕貴もよかった。島田洋八の登場シーンはなぜか見逃してしまったけど、エンドロールの協力者の中に今いくよ・くるよを見つけたので、ちょっとだけ得した気分になりました。さすがに「もみじまんじゅう~」は聞かれなかったが、このギャグもばあちゃんがいなかったら生まれなかったんでしょうね。
【2006年6月映画館にて】