「些細な事柄を突き抜ける何か」朱花(はねづ)の月 cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
些細な事柄を突き抜ける何か
「わけのわからない映画」「すっきりしない映画」は、決して嫌いではありません。むしろ、余韻を味わえ、再発見を楽しめる映画が好きです。
ですから、テツヤは自殺したのか加夜子が殺したのか、加夜子が宿した子はどちらの子だったのか、本当に堕ろしたのか、そもそも本当に妊娠していたのか、さらには彼らは実在しているのか、死者や亡霊といったものではないのか…といった諸々は気になりません。
けれども、つじつまの合わない些細な点がどうにも受け入れられませんでした。飛鳥に買い物に行った二人が、行きは歩きで帰りは自転車であるとか、川にざぶざぶと入っていく前から加夜子のスカートが濡れていて、帰りは濡れていない(もしかしたら乾いたのかもしれませんが。)とか。…子役が、成長後の麿赤兒さんに似ていない点は全く構いませんが。
松江哲明監督による「沙羅双樹」のメイキングで、河瀬監督は「「萌の朱雀」で、カットが変わると右手と左手が入れ替わっているシーンがある。でも、映画がきちんと成立していれば、気にならないはず。」といったことを話していた記憶があります。残念ながら、本作ではかなり気になりました。
スコアは、明川哲也さんの深みあるモノローグ(さすが元「叫ぶ詩人の会」です。)と、麿赤兒さんの出しゃばらない佇まいに対して、です。主役の若い三人より、麿赤兒、樹木希林、西川のりお三人のやりとりを観たかった、と感じました。
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