「何もできない中年男のブチ切れ願望」スーパー! マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
何もできない中年男のブチ切れ願望
お手製のコスチュームでヒーローに変身!といえば「キック・アス」を思い出すが、向こうは少年で、動機も割りと純粋な正義感だ。それに比べ、今作のヒーロー「クリムゾンボルト」のフランクは、逃げられた女房を取り戻したいという中年で動機が冴えない。
変身というのは“天に変わって”正義を貫くとか、そういう意味の象徴なのだが、フランクの場合は自信がなくて何も出来ない自分に力を与えてくれるものとしてコスチュームがある。コスチュームそのものが“天の力”であり、コスチュームを着けないと何も出来ないのだ。
そんな情けない中年男に妙な力を注ぎ込むのがエレン・ペイジ演じるリビーだ。彼女の場合は、完全にぶっ飛んでいて、コスチュームさえ着けていたら何をしても許されるみたいなところがある。
自ら相棒ボルティーを志願し、まだ良識の残っている中年男を翻弄していくところが笑える。
だが、クリムゾンボルトにとってボルティーは真の仲間なのだろうか? クリムゾンボルトをけしかけるボルティーの声が“悪魔の囁き”に聞こえてならない。
悪への報復はどんどんエスカレートし、残忍な中にも美を追求する「キック・アス」とは一線を画した本能丸出しの残虐性を見せ始める。
悪いヤツに、そこまでやったら気持ちいいだろうなと思うぐらい徹底している。だが、天が一人の人間にそんな力を与えるわけもなく、その代償はしっかり持って行かれる。
この映画、他人のちょっとした理不尽な行動に腹を立てながらも我慢する、そんな日常のストレスを発散させてくれるが、普段から勇気ある行動を取っていないとツケが回ってくるという黒い罠が、ブラックジョークという名の下にあちこちに潜んでいる。
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