「ポケットの小石に変わるまで」ラビット・ホール momogaria-noさんの映画レビュー(感想・評価)
ポケットの小石に変わるまで
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交通事故で息子を亡くした夫婦。
8ヶ月経っても二人は息子を亡くしたあの日の最中にいる。
愛らしい小さな指紋の跡すら、失神してしまう程の喪失感を伴う。
大火事に巻込まれた重傷患者のように、心の中はけたたましい火傷が巣食う。
毎日毎日、時間をやり過ごすだけで精一杯の日々。
一秒たりとも苦しみは彼らを見逃してくれない。
痛みに麻痺した心は、誰彼かまわず傷つけてしまう。
皮肉なくらいに、彼らを包む太陽や空や花々は優しく温かい。
毎日毎日積み重ね、半年、1年、3年、5年とかけ傷は乾いていく。
彼女の母親も10年前、麻薬中毒で息子を亡くした。
胸を覆いつくす重石がだんだん軽くなり、ポケットに入るまでに小さくなった。
悲しみも痛みも、息子が可愛い笑顔と共に遺してくれたから耐えられる。
加害者の学生を町で見かけて、思わず車で追いかけた。
彼は正直に誠実に事故のことを話し、その瞳は虚ろだった。
当り散らし口論できる家族がいるって安堵感を与えてくれるのだな。
二コール・キッドマンの力強く繊細な演技に揺さぶる力あり。
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