「伊勢谷友介版『ときめきに死す』(・∀・)」セイジ 陸の魚 初台験さんの映画レビュー(感想・評価)
伊勢谷友介版『ときめきに死す』(・∀・)
伊勢谷友介は監督としての才能も相当なもんですなこれは(・∀・)イイ!!
広告代理店に勤める「僕」は、なぜか夜中車を走らせて山奥に向かう。
そこで本人が学生時代だった20年前のエピソードに話が飛ぶ。
とにかく話は終始静かなトーンで、そして淡々と、でもどこか危険な雰囲気を漂わせながら進んでく。
冒頭で西島秀俊が山道を走ってるところ鹿を轢いてしまい、それを働いてるドライブインに持って帰って解体して食用に保存するというところで「この映画は甘い話じゃねえぞ(ΦωΦ)フフフ・・」と宣言してる(゚д゚)イーヨイイヨー
森山未来はたまたま自転車で新井浩文の運転する車と衝突して自転車が壊れてしまい、それが縁でそのドライブインに行ってそこの仕事を手伝うようになる。
そこでそのドライブインで働くセイジという寡黙な男と知り合うが、全く何も話さずこちらから何か聞いても何も言わない。
でも「僕」はそのセイジに惹かれていき、徐々にセイジは子供の頃妹を守るために両親を殺してしまうが、その妹もセイジが少年院に入ってる間に死んでしまったという事実を知る。
つまり自分が守りたかったはずの妹を結果として死なせてしまったことで、自分が妹を殺してしまったという罪悪感にさいなまれながら生きてきたということ。
だからこれまで他人に心を開かずに孤独に生きてきた。
裕木奈江演じるドライブインのオーナーとたまに寝る程度。
でもここでも相手にされるがままで、自分から特にアクションは起こさない。
りつ子という女の子が近所にいて、その子とたまに遊ぶ程度。
しかし裕木奈江はかなり演技力のある女優になったな~∑(゚ω゚ノ)ノ
一昔前はかなり「ぶりっこ」「可愛げがない」「何しにギリシャまで留学したのか」と散々叩かれてたけど、この演技を見るともうかつてドラマに出てた頃の面影はもう一切ない(ヾノ・∀・`)
山田洋二監督の『学校』でも結構いい演技はしてたとは思うけど、まさかここまでになってたとは・・・(;´∀`)
動物愛護団体の職員が来た時に言い放つ「動物を守りたいんだったら、人間がいなければいいんだ。」という台詞も、REBIRTH PROJECTを主催して社会貢献活動をしてる伊勢谷友介が監督してることを考えるとなかなか深みがある(・∀・)
冒頭の猪を轢いちまうシーンもこれと呼応してると思う。
そんな静かな場所だけど、連続殺人犯がセイジがたまに遊ぶりつ子の両親を殺し、さらにりつ子も片腕を斬られてしまう。
りつ子は命は取り留めたものの、ショックから心神喪失状態になってしまう。
ここから一気に映画のトーンが変わってくる(;・∀・)
その事件以来、セイジはりつ子に会おうとしないで
セイジはドライブインの常連客たちに頼まれてりつ子の家まで送って行くが、結局りつ子は一切何も話さない。
セイジに会えば何か話すと判断したみんなは、津川雅彦扮するおじいちゃんに誘われてりつ子に会ってくれとせがんで渋々会いに行く。
セイジが会いたがらなかったのは、昔両親を殺して妹を守ろうとしたものの妹は結局死んでしまったため、その妹とりつ子を重ねてたため。
片腕をなくしたりつ子の目の前に立つのは、セイジにとってはとてもいたたまれないことだったと思われる。
つまりセイジにとっては2度妹を死なせてしまったことになる。
そこで妹を生き返らせるため、セイジは斧を持ってきて目の前で自分の片腕を切断するガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
そこで話は現代に戻る。
大人になった「僕」は、そのドライブインのオーナーになってる成長したりつ子と会う。
「いい人生を過ごしてきたんだね。」
セイジはその後どうしたのか、今も生きてるのか死んでるのか分からないまま終わり。
でもりつ子はセイジのあの行動で生き返ったことは間違いない。
セイジは妹を守れたわけですなo(`・д・´)o ウン!!
全体を通すと、森田芳光監督の『ときめきに死す』に非常に雰囲気が似てる気がする。
自然の森林の綺麗な風景、素性が分からない寡黙な男に惹かれていく様子、女がいるけど自分からは手を出さない男、そして最後の最後で鮮血と一緒にそれまでの自分の押し殺していた感情をほとばしらせるところ。
人と人が交流して、その何気ない会話ややりとりの面白さを伊勢谷友介流にうまく切り取っていると思う。
これは伊勢谷友介版『ときめきに死す』ですな(・∀・)ウン!!
セイジと僕が2人で森に入って、静かに自分語りを始めるシーンの幻想的な映し方はちょっと良く意味が分からんけど、伊勢谷友介の社会貢献にも通じる哲学が根底にあり、その上で見事な文芸作品として成立してる((;゚д゚))ス、スゲェ
お勧めですイイネ♪d('∀'o)