ほしのこえのレビュー・感想・評価

新海監督の作品はもともと好きなのだが、今回は原点ともいうべき作品を初めて鑑賞する。近未来の、宇宙と地球と引き裂かれた、女の子と男の子の、切ない物語。まるで写真のように切り取られた日常風景をアニメで描く手法は当時から健在しているんだなあと感心。ロボットアニメのクオリティは、、、やっぱり大御所には及ばず。これは、致し方あるまい。メールのやり取りが、地球から離れるに従ってどんどんと長く時間がかかっていくのが哀しい。

なんだか、未来と今とかちぐはぐに入り混じっていて、それが逆にリアルだった。メールが届くのに1年かかるとか、世界観が独特なのに妙にアナログなところとか、切なさをいい具合に醸し出していた。

総合65点 （ ストーリー：55点｜キャスト：65点｜演出：75点｜ビジュアル：80点｜音楽：70点 ） 中学生が命懸けの宇宙戦士に選ばれて何光年も先で戦闘を繰り広げるという設定は非現実的だが、時間も場所もあまりに環境の異なる二人が同じ時を生きて過去の思いを受け取るということに主眼を置いてみればしっとりと心にくる。物語も戦闘場面もまだまだ荒削りなところも多いのだが、たった一人で制作したことを考えれば逆にこの質は素晴らしいとも言える。美しい映像と静かな雰囲気の中で二人が遠く隔てて想いを綴るというその演出から、その後の新海誠作品の代表作「秒速5センチメートル」の原点を見出すことが出来る記念碑的作品。