「まんまと泣かされました。」サンザシの樹の下で sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
まんまと泣かされました。
主人公の静秋役のチョウ・ドンユィが、「少年の君」のヒロインだったことを後で知り、納得しました。とにかく、可憐で初々しい。
そして、孫役のショーン・ドウがまたいい!あの嫌味のない爽やかさ。
この奥手な2人のやりとりを見て、
谷川俊太郎の詩の一節、「何故やっちまわないんだ早いとこ」というのが思わず浮かんでしまいましたが、まあ、このもどかしさが、ノスタルジーでもありました。
サンザシの絵柄の洗面器や、金魚のアクセサリーで幸せになれた時代、自分自身にだって確かにあったはず。
描かれているエピソード一つ一つが押し付けがましくなく、心に自然と染み込んできました。
それでも、ストーリー自体は、白血病が出てくるあたり、ベタ中のベタ。泣くまでには至らなかったのですが、ラスト寸前にひっくり返されました。
病院が定期検診と言い張っていたのは、そういうことかと思い、主人公の涙ながらの呼びかけに(しかも、相手の名前ではなく、自分の名前しか呼べない切なさに)胸が詰まってきたところに、アレがきて、一気に涙腺崩壊。まんまと泣かされてしまいました。
全編通して、落ち着いたトーンの色彩が美しく、農村に向かうバスまでが素敵に見えました。病院を追い出され、門の外で一晩過ごすシーンも、素晴らしく美しかったです。
「夜中に台所で」は以前持ってた詩集のような気がしますが、全く覚えていませんでした。
「どっか行こうと君がいう・・・・ここがどこかになっていく」という内容の詩がこの詩集にあったような気がしますが、違いましたっけ。
谷川俊太郎のパートナーの、絵本作家佐野洋子が、ヌードのクロッキーを描いていて、彼ら=詩人たち・絵描きたちのエロチシズムに心を奪われたのは高校生の時分でした。
懐かしく思い出しました。
素朴だけれどいい映画をsow_miyaさんと共有できて幸甚です。
Mさんコメントありがとうございます。「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」という詩集です。大学1年の時に買ったので、もう40年くらい前になるでしょうか。このフレーズ、なぜかずっと心に残ってます。