劇場公開日 2011年10月7日

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「信じる仲間と超える壁」猿の惑星:創世記(ジェネシス) 中野祐治さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 信じる仲間と超える壁

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

難しい

旧シリーズを知っている者として、「新しい解釈でどう描かれるのか」が気になり、『猿の惑星:創世記』を観ることにしました。あの有名な結末に至るまでの物語を、現代の映像技術とリアルな感情描写で見せてくれるということで、ただのリメイクではない期待がありました。シリーズのファンとしても、これは見逃せない作品だと感じたのです。

今作で特に印象に残ったのは、主人公シーザーの成長と葛藤です。人間によって育てられながらも、同族である猿たちとの間に強い絆を築き、やがて人間社会と対立せざるを得ない立場に立たされます。その過程で描かれるのは、"善意"が必ずしも善い結果を生まない現実です。研究者たちは公式には「治療薬の開発」という名目で行動していましたが、実際にはその薬が猿たちに高い知性を与え、人間と猿の関係を大きく変えてしまいます。力で支配しようとする者もいれば、シーザーのように信頼と知恵で状況を切り拓こうとする者もいます。その対比が物語をより深くしています。

この作品からは、ビジネスや人生に通じる多くの教訓を得られます。私たちも日々、「正しい」とされる方法や、業界の常識に従うことが安全だと思いがちです。しかし、現状を変える力は、その枠を疑い、新しい視点から戦略を描くことによって生まれます。私自身、小売りやコンサルティングの現場で、既存のやり方に固執していては突破口を開けないことを痛感してきました。時には少数派の考え方を取り入れ、信頼できる仲間と共に挑戦することが、未来を切り拓く唯一の方法になるのです。

『猿の惑星:創世記』は、知恵と信頼が力に勝ることを力強く示してくれます。公式の物語をなぞるだけではなく、自らの意思で選び、行動することの大切さを、改めて教えてくれる作品です。

中野祐治