「暗闇のリスベット・第一章」ドラゴン・タトゥーの女 カバンさんの映画レビュー(感想・評価)
暗闇のリスベット・第一章
事前にDVDのスウェーデン版で予習。北欧の映画は淡々と描かれているイメージが付きまとっていましたが、これは例外でとてもダイナミック。ハリウッドにしたらどう化けるのか。
ハリウッド版では、オープニングから驚きました。『♪移民の歌』でグイグイ狂気の世界へ引きずり込まれ、とても良い滑り出し。この魅せ方は素晴らしいです。
映画館で観る映画では、今までで最長の上映時間で緊張していました。
しかし、ストーリーとしては、テンポが早く2時間38分の長さを感じさせず、振り返れば沢山あったが、もうクライマックスまで来たかと思った程です。
それだけに、ミステリー要素は不十分だったかもしれません。一族のメンバーもぞろぞろ出てきて、各人のキャラを丁寧に引き出せていれば観やすかったと思います。
でも、原作者も監督も主眼に描きたかったのは、ミステリー如何よりも、きっとヒロインの天才ハッカー・リスベットでは?
体中に刺青を彫り、顔中にピアスを施してイカつい容姿をしても(※リスベットを演じたルーニー・マーラは、顔のピアスの一部は役作りで本当に空けました)、内面は硝子のように繊細で脆く、弱さを隠すための虚勢なのです。
更には新しい法定後見人から凄惨な性的虐待を受けています。
原作者自身、生前は女性差別を激しく嫌っており、リスベットの“痛み”と男性の卑劣さが実に残酷に描かれています。
リスベットにとって男性のほとんどは憎悪の対象なはずです。それでも何故、雑誌記者のミカエルに危険を冒してまで調査に協力し、心も体も委ねたのか。
きっと、リスベットはミカエルとの関わりを通して、暗闇からの突破口を見出そうともがいているのかもしれません。ミカエルもまた、リスベットに憐れみを抱き、必ず救い出そうと、彼女の心の闇に入り込もうとしているのかもしれません。
彼女の心境の変化が、3部作に繋がる重要なカギになるでしょう。
2人の今後にどんなミステリーが待ち受け、どう乗り越えるか、期待が持てます。
スウェーデンが舞台でセリフが全編英語というのは違和感ありましたが、ハリウッド版の方が迫力や緊張が良く伝わっています。
ダニエル・クレイグが役不足だったかも、と感じる程にルーニー・マーラが体当たりの演技で、強烈な印象を与えてくれました。モザイクが入った映画は初めて見ました。
アカデミー候補というのも納得できます。