「殺人マシーンとして生きる童話のヒロイン」ハンナ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
殺人マシーンとして生きる童話のヒロイン
元CIAのエージェントだった父に殺人マシーンとして育てられた少女ハンナ。ある任務の為ヨーロッパに赴くが、父と因縁のある女性エージェント、マリッサが執拗に追う…。
「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライト監督によるアクション。
文芸監督がアクション!?と意表を突かれるが、こういう映画も撮れるのかと感心。
フィンランドの美しい白銀世界、スタイリッシュなアクション・シーン…凝った映像も文芸監督ならでは。
ケミカル・ブラザーズの音楽はスーパークール!
「つぐない」でジョー・ライトと組んだシアーシャ・ローナンがハンナに扮する。
「つぐない」でまだあどけなかった女の子は「ラブリーボーン」で美少女に成長し、本作ではアクションも披露、個性派美少女スターへ着実にステップアップ。
マリッサにはケイト・ブランシェット。
濃いきつめのメイクで凄みのある怪演。本当に器用な女優!
あまりアクションと縁のない女優二人が強烈な存在感を発揮し、ハンナの父親役エリック・バナは少々影が薄く感じるほど。
フィンランドの山小屋で外界を知らずに育ったハンナ。
父に叩き込まれた殺人術と本で覚えた知識以外知らないハンナにとって、外界は驚く事ばかり。
電気、テレビ、湯沸かし器…。
ハンナが愛読するグリム童話よろしく不思議の世界に迷い込んだヒロインのよう。
旅行中の家族と出会い、同年代の女の子と触れ合う。
女の子らしい表情を見せ、友情を感じる。
が、追跡者を冷酷に殺す。
殺人マシーンとして育てられた少女の残酷さが際立つ。
ハンナを殺人マシーンとして育てた父の目的は、妻を殺したマリッサへの復讐。
しかし終盤、ハンナにも隠してきた秘密が明かされ、ハンナは父を突き放す。
その直後、父はマリッサに殺され、ハンナの命も狙うが、決着を着ける。
「心臓、外しちゃった」
ラストのハンナのセリフは、殺人マシーンとしてしか生きられず、不思議の世界をさ迷い続ける童話のヒロインを物語る。