「選べない。逃げられない。守るしかない。」ウィンターズ・ボーン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
選べない。逃げられない。守るしかない。
名画座にて。
サンダンスでグランプリをとり、アカデミー賞にもノミネートされた
本作が名画座にくるというので楽しみにしていた。
いやはや^^;想像はしていたけど、まぁ~残酷で、寒々しい映画。
確かに「フローズン・リバー」と似た様相があるが、こちらは17歳の
少女が主人公とあって、さらに痛々しい。
とはいえこのJ・ローレンス、ものすごい貫録がありタフこの上ない。
男なら間違いなくタフ・ガイと書きたいタイプの凄腕女優という感じ。
村のヤクザ(としか思えない)組織相手に勇敢に立ち向かう様子は、
一家の主。がふさわしい。そうならざるを得ない状況下なんだけど^^;
もっと違う環境を想像していたのだ。
冒頭からドラッグに汚染された村、母親は精神異常、父親は失踪、
村のどいつもこいつも皆暴力的でおかしい、といった環境の有様に
溜息すら出ないほど。これじゃあ…どうやって生きればいいのか。
ドラッグに頼ることで成り立つ世界で暮らしてきたこの一家。
まだ小さな弟妹もいるというのに、こんな(見たくない)米国の闇を
今作は容赦なく見せる。
とにかく目下の問題は保釈金として自宅を担保にし失踪した父親を
探し出し、母親と弟妹の世話をしなければならないという現実だ。
食うものにも困った主人公は、弟にハンターとして狩りを教え、
食いつなぐ一方で、踏み込んではいけない村の掟に迫っていく。。。
こんな世界、日本じゃまずあり得ないと思ってしまうが、
生まれながらにしてこの環境、逃げたくても逃げられない絶望感は
先日観た「ヒミズ」(あっちのがかなり甘いけど)に通じるものがあった。
踏み込んだ世界をどう捉え、どう理解し、どう乗り越えていくのか。
どうみても子供が考えなきゃならない世界じゃないんだけど(汗)
情け容赦ない大人達の暴言やリンチぶりに、絶望を感じると同時に、
私はあんたらとは違う、あんたらのように堕落しないんだよ!という
強い意志を抱く少年や少女の、真っ直ぐな視線に惹きつけられる。
生まれる世界を選べない子供は、どうあがいてもその環境で生きる
しかないわけだ。親が親なら…と堕落する子供が多い一方で、
それすらできない(まさに親代わりの)子供たちもいるということだ。
知恵を手繰り寄せ、使えるものは何でも利用する大胆な行動ぶりに
クスリに負けている大人達が哀れに映る。それにしてもあんなに怖い
女たちがいる村なんて絶対に嫌だ(汗)いつ殺されるか分かりゃしない!
あり得ない…と思いたい自分が必死に画面を止めているような作品。
(敵だらけの巣穴を守る雌の本能、どこにいても女って強いのねぇ~)