「なんともはや…」貞子3D 仮面ライターさんの映画レビュー(感想・評価)
なんともはや…
ある意味恐怖な作品。DVDレンタルですら、お金を払ったことを後悔する作品でした。
貞子の概念を覆すことは古くからのファンには疎まれるでしょうが、時代の流れもありますから、それ自体に異を唱えるつもりはありません。ただ、それをするにしても、名を冠する限りは、貞子やリングという作品の魅力をしっかり継承していることが最低条件です。
具体的にいくつか挙げるなら、
・じっとりした恐怖からにじみ出る絶望感
・日常に潜む恐怖を感じさせる親近感
・掘り下げられた設定と人間の本質を垣間見させるストーリー
あたりではないでしょうか。(完全に主観によりますが。)
この映画では、これらの何一つも踏襲されていません。
主人公はなぜか格闘家のような強さで、終盤ともなれば悲鳴を上げながら怪物をどんどんなぎ倒していきます。ピンチになったら気合でせん滅! これには、どちらかといえば貞子のほうが絶望するくらいのもんです。まあ、そもそも戦うのがおかしいんですけどね。たとえ主人公が格闘家でも、戦っちゃいけないんですよ。勝てないのが大前提なんだから。
演じるのは人気の役者さんやベテランさんが多いですが、その配役がかえって月9ドラマなどの番組を思わせ、テレビの向こうの世界だと視聴者に認識させてしまいます。映像自体も日常とはかけ離れたシーンが多く、演出も全体的に明るすぎ、すぐ近くで恐怖を感じることができません。どこか遠いところで女優さんが奇っ怪なモンスターと戦っている映像を見てる、ただそれだけです。
ストーリーは説明不足ですし、おそらくですがそうでなくてもあまり深みはないと思います。(原作は読んでないですが。)怖い場所ができた理由と、主人公がそこに行く理由、その二つを何とか説明するためだけにつくられたように感じました。前半は首を傾げつつもなんとか深読みしようと頑張っていましたが、バッタが出てきた時点でそれももう諦めました。
繰り返しになりますが、ホラーの醍醐味とは、やはり人智を超えたどうにもならない絶望と恐怖だと思うのです。鉄パイプで殴って撃退できるなら、そこらのヤンキーと大差ありません。
どうにもならない相手から何とか生き延びるくらいでちょうどいいのに、撃退したり変に魅せようとしたせいで、世界観もストーリーも何もかも台無しになってしまった。そんな作品。