劇場公開日 2011年8月27日

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「父親が知らない秘密を握る観客の優越感が笑いの原動力」あしたのパスタはアルデンテ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0父親が知らない秘密を握る観客の優越感が笑いの原動力

2011年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

予告篇からも分かる通り、実は兄妹揃ってゲイだったというところが笑わせどころ。観客動員のキーポイントもここにある。
ところが本篇を観ると、人はそれぞれに何某かの問題を抱えているもので、人生は思い通りにはならないこともあるのだけれども、自分の道は自分で切り開きなさいというメッセージが核になっている。
そして、このメッセージを伝える役目が主人公のトンマーゾではなく、お祖母ちゃんだというところが、実はこの作品の隠れたもうひとつのキーポイントなのだ。

もちろん、ゲイを取り巻くドタバタとユーモアの可笑しさもある。
保守的な父親がゲイの息子を持った怒り、哀しみ、絶望感に打ちひしがれるのに対し、観客は弟までゲイだという父親の知らない秘密を握っている。この優越感こそが、父親の行動を笑うことができる原動力となる。
突然訪れたトンマーゾの友人たちが、家族にゲイだと悟られないよう四苦八苦する姿にも笑える。
この映画は、ゲイを笑いものにしているのではない。ゲイは個性のひとつだと訴えつつ、それが受け入れられない人の衝動を面白可笑しく描いているのだ。

さて、影の主人公、トンマーゾのお祖母ちゃん。彼女は、いったい過去にどんなことを背負って生きてきたのか? 残り少ない人生を、自分のためにいったいどう生きるのか? それは観てのお楽しみ。

トンマーゾに気がありそうな美人で共同経営者のアルバ。彼女が映画の冒頭でやらかす行動は、その後の展開にはなんの意味も持たず意味不明。
エンディングも、家族の絆と互いを尊重しつつ自分らしさを取り戻す、という意味合いは分かるのだが、なにかしゃきっとしないもどかしさを感じる。
登場人物は、皆、明るく振る舞っているのだが、煮え切らないものを持ったままという終わり方が性に合わない。

マスター@だんだん