アメイジング・グレイスのレビュー・感想・評価
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必ず夜明けはくる。
名画座にて。
2006年度の英国作品が、どうして今頃になって公開?と思いながら、
よほどの名作だからか?なんて期待してたら、まさしくそうだった。
いや~なんで??と思うほど素晴らしい作品なのに全く知らなかった。
名曲「アメイジング・グレイス」の歌詞ですら、何度も耳にしているのに
そういう意味を孕んでいたなんて全く知らなかったという、恥ずかしさ。
18世紀の英国が舞台、恩師が作詞した「アメイジング・グレイス」を胸に
奴隷貿易廃止に尽力した政治家、W・ウィルバーフォースの半生を描く。
当時の英国ではアフリカの奴隷貿易が主な収入源で、その移送環境は
家畜以下、船中で死亡した奴隷は海に投げ捨てられるという惨状に心を
痛めた彼は、若くして政治家となり、生涯をかけて議会と闘うことになる。
もともと平和快楽主義であり博愛心と信仰にも深かった彼は、政治家か、
牧師となって神に仕えるかで迷うが、周囲の強い説得により政治の世界に
留まることになる。そして…同じ志を持つ友人・妻・協力者に恵まれる彼
だが、心労からの度重なる病、何度も否決される法案に悩まされ続ける。
そんな中でも彼を支え続けたのがこの名曲であった…。いう実話である。
今の日本の現状が、立場は違えど、何気に似ていることに驚く。
経済効果を選ぶか、安全を優先させるべきか。本来はどちらにも叶う
新しい技術が導入されるのが一番望ましいが、早急な対応には届かない。
ではどうするか。個々の努力と姿勢に期待するしかない…、そこで節電。
この猛暑の中、効果はカタチで顕れている。日本人ならではの選択肢か。
個人の意識改革というのは、小さく見えてもっとも大規模な変革かも。
今作でも大きな波をひっくり返す前に、ウィルバーフォースは様々な活動
をしている。邸宅にあれだけのお客(貧民)を招き入れてランチを振舞ったり、
雨で倒れた馬を休ませる方を優先させるほどの博愛ぶりは、彼本来の姿を
しっかりと映し出し、私欲に走れば満足か?という難題を突きつけてくる。
濡れた芝生にゴロリと横たわり、迎えにきた使用人に向って、こんな主人では
おかしいか?と尋ねるシーンが好きだ。それに対し使用人も粋な言葉で応える
(台詞は忘れた)のだが、こんな関係を保てる気位の柔軟さが彼の魅力である。
彼の思想と出逢い、親交を深めた友人や協力者は、そこが分かるから面白い。
とりわけ、のちの首相となったW・ピットや運動指導者のT・クラークソンとの
長きにわたる付き合いは(女の私でも)羨ましいくらいの、これぞ親友!揃い。
反目を繰り返しつつも、あっという間にゴールインした妻・バーバラも然りで、
とにかく彼の周りには(議会は別として)よき理解者や協力者があとを絶たない。
これは、その人の人望そのものでしょう。どこかの指導者にも供わればねぇ^^;
実話としての重みは当然として、その後の政治の動向、戦争勃発、病の進行、
遅々として進まない法案の成立がやっと叶う後半の、ちょっとした、ズル(爆)を
しようなんていう戦略の巧みさにもニヤリ。ラストは涙が達成感を促してくれる。
キャストの巧みな演技、適材にも唸らされる。ヨアンの歌の上手さにも注目!
(長い長い夜明けを待ったような、それでいてまったく飽きない演出もお見事。)
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