アイ・アム・ナンバー4 : 映画評論・批評
2011年7月5日更新
2011年7月8日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにてロードショー
強引な疾走感に貫かれたSFアクション。その本質は悩める若者の成長ドラマ
まるでTVシリーズのパイロット版みたいな作品だ。演出がTV風だったり、映画的スケール感が乏しいという意味ではない。ストーリーの導入部分がかなりはしょられているうえに、最後に“To Be Continued”というテロップが出てきそうな終わり方。主人公が9人の逃亡者のうちのナンバー4だという位置づけからして、奇妙な中途半端感は否めない。
とはいえ何十話もの連続ドラマへの興味が持続せず、昨今やたら増えた2部作、3部作ものも苦手な筆者には、本作の強引な疾走感が好ましく映ったのも事実である。2時間弱の中身にSF、青春、ラブ、超能力などの要素を濃縮。地球外にルーツを持つ若者が田舎町の高校に流れ着き、ジョン・スミスといういかにもな偽名を名乗る。主人公は根無し草のアウトローであり、決して人間には言えぬ秘密を抱えたアウトサイダーだ。明らかにティーン層を意識した企画なのだが、お洒落すぎず軽薄すぎず、むしろ古典的な悩める若者の成長物語を核にしているため、筆者のような“元・若者”もすんなり感情移入できる。
やがて潜在的パワーに目覚めた主人公は眩い人体発光現象とともに超能力を発揮し、今どき珍しくアナログカメラの光の質感にこだわる写真マニアの女の子と恋に落ちる。こうした“光”にまつわる逸話をもう少し掘り下げたら、よりロマンチックに仕上がったと思うが、迫り来る敵はそんな時間の猶予を与えてくれない。美しきナンバー6の突然の参戦にもギョッと目を奪われ、気がつけば怒濤のクライマックスに突入していた。
(高橋諭治)