「大地震」唐山大地震 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
大地震
2011年に公開予定だったのだが、東日本大震災の発生で、公開の無期延期を余儀なくされた作品である。
冒頭の、大量のトンボが飛び去るシーンからただならぬ気配を漂わせ、モチーフである大地震まで、言いようのない緊張を観ている我々に強いる。
さらには、地震そのもののシーンも、よくぞここまで描いたものと感心する出来映えであった。
残酷であるとか、見るに耐えないとか、そういうことも少しは思ったが、現実はもっと悲惨なのだ。
ふたりの子どもががれきの下敷きになっていて、どちらを助けるか選べと母親に迫るシーンはなんとも痛ましい。
ここはどう描いても共感とはほど遠い。ましてやなぜ息子を、という問いも無駄である。誰にもわからない。
ただ、本作では犠牲にした娘が実は生きていたというところからドラマが始まる。
フォン・シャオガン監督は、息子と母親のパートと娘のパートをほどよく配置し、両方の暮らしを平穏に描いていく。退屈といってもいいくらいだ。
平和な暮らしとは一種退屈なものだ。
そして、四川の大地震。
想像を絶する状況に、各登場人物は直面していくわけで、僕はただ彼らを応援することしかできない。
東日本の復興もいまだ道半ば。けっして風化させてはならない。
この映画が、規模は小さくなったとはいえ、無事に一般公開されたことは喜ばしいことである。
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