劇場公開日 2011年7月23日

ロック わんこの島 : インタビュー

2011年7月20日更新
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麻生久美子“原点回帰”の「ロック わんこの島」は初もの尽くし

「母親役をやる歳になったんだなあ…」と思いをはせる言葉には隔世の感がある。1995年のデビュー以来、常に映画を主戦場にしてきた麻生久美子が、「ロック わんこの島」で初の母親、それも小学2年生の息子を持つ役に挑んだ。2000年8月の伊豆諸島・三宅島の噴火によって全島避難を余儀なくされた家族と、島に取り残された愛犬のきずなを描く実話をベースにした人間ドラマ。三宅島でのゆっくりと時間が流れるロケや、中江功監督の粘り強い演出で思い起こしたのは、映画女優として生きる道標を示した「カンゾー先生」だった。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)

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瀬戸内海を望む岡山・牛窓町。「カンゾー先生」のロケ地となった海辺で、当時19歳の麻生が今村昌平監督の指導を受け、がむしゃらにヒロインのソノ子役に取り組んでいる姿を今でも鮮明に覚えている。あれから10余年。スクリーンで多彩な役を演じ続け、今では映画女優の風格すら感じさせるが、「ロック」の撮影ではふとしたことで“原点”を思い出したという。

「今まで(の撮影)は、だいたいが時間に追われていますよね(笑)。今回は1日に1シーン、2シーンというのが普通だったので、『カンゾー先生』のころとペースがそっくりで、ぜいたくに(時間を)使っているなあと思って。三宅島が噴火して『ドカンがきた!』と言って走っていくシーンでは、すごく思い出しました」

だが、出演を決意するまでには大きな葛藤があった。6歳のトイプードル・つぶあんをこよなく愛するほど犬が好きなあまり、犬の出ている映画を見られないのだ。「ロック わんこの島」も、脚本のタイトルを見た時点で断ろうとした。

「犬の出ている映画は、ちょっとかわいそうなことになるものが多いので見たことがないんです。けれどマネジャーさんが『脚本だけでも読んで』と言うので、犬が死なないことを確認して読んだら、犬の話ではあるけれども家族のきずなや三宅島への思いなどが丁寧に描かれていて、思っていたものとは違ったのでやらせていただこうと思いました」

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役どころは、島で民宿を営む野山家の母ちゃん・貴子。元気いっぱいで家庭と宿を切り盛りし、父ちゃん(佐藤隆太)と一人息子の芯(土師野隆之介)に目いっぱいの愛を注ぐ肝っ玉母ちゃんである。脚本の初期段階では温かく守るタイプの女性だったそうだが、最終稿でキャラクター設定が変わっていたという。

「とても面白いキャラクターなので、こういう変更ならうれしいって、すごく魅力を感じました。監督からはキャラクターを考えて演じなくていい、元気ではあるけれどシーンごとに全部違う人に見えるような感じでやってほしいと言われたので、いろいろと考えて役づくりはせず、その都度、監督と相談しながらつくっていきました」

さらに初めての母親役には、そういう年齢になったという感慨と同時に実際に子どもがいない不安もつきまとった。これを払拭(ふっしょく)したのが、子役の土師野の存在だった。

「普通の素朴ないい子で、すごくよく話しかけてくれるんです。隆太くんにも話しかけて、2人でコントみたいなこともしていました。三宅島では天気が悪くて撮影が進まず、1カ月半くらいいたのでその時間にも助けられて、自然な形で仲良くなれました。それでも試写を見るまでは怖かったんですけれど、母親というよりは私にとってはすごくいい理想の家族に映ったので、ちょっとホッとしました」

それでは、もう一方の主役・ロックとのコミュニケーションはどうだったのだろう。

「子犬はすごくかわいくて、ウチの犬と同じくらいのサイズなのでどう扱っていいか分かるんですけれど、成犬になると大きくてやっぱり勝手が違うんですよね。だから、ロックを座らせなきゃいけないときにできなくて、教えてもらいながらやりました。犬を飼っているからといって、全部の犬とうまくいくとは限らないと思いました」

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インタビュー2 ~麻生久美子“原点回帰”の「ロック わんこの島」は初もの尽くし(2/2)
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