トスカーナの贋作のレビュー・感想・評価
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切なくて苦い、大人のラブストーリー
久しぶりに見たキアロスタミ作。
人の顔を大写しにする画面の切り方が多いせいか、なんだかドキドキする。
鏡とか窓に相手を映り込ませる方法も印象的。
アメリカ映画には興奮が、ヨーロッパ映画には物語もしくは人生がある……と改めて思った。
途中、話が大転回するシーンで、「え? どういうこと?」と大混乱し、思わず最初から見直した。
そうしてみると、なんだか腑に落ちなかった表情や会話が一気に納得できる。
本物とコピーとの差とは?
ジュリエット・ビノシュとウィリアム・シュメルのほぼ二人芝居のようなストーリー。
夫婦を演じる二人。でも、本当に演じているのか? もしかしたら本物の夫婦ではなかったのか? イタリアのトスカーナ地方の片田舎を舞台に、訪れた作家とギャラリーの女主人が町を散策しながら交わす会話が全てである。
始めは他愛の無い会話から、少しずつ男と女の本音が語られていく。
まるで本物の夫婦のように・・・。
新婚旅行で泊まったホテルの同じ部屋に入り、窓の外の景色の変わらなさを話しながらも作家は時間を気にする。
だが、その時も過ぎていく。
二人はいったいどっちなのか?本物なのか、コピーなのか。
ジュリエット・ビノシュはプロ。
ウィリアム・シュメルは素人。
その二人の組み合わせ。
本物とコピー、それらを区別するものは何か?
意味深なラストで終わる。
観終わってもまたすぐ観たくなっている、魔法の映画!
一言でいえば中年のおじさん、おばさんが夫婦のふりをしてぶらぶら散歩するお話。
最初は仲良し夫婦だったのに、だんだんお互いの結婚生活の不満があふれ出し、ぶつけ合い、喧嘩になって…
こんなにも男の言い分、女の言い分、が本音で生々しく描かれている映画は初めて見ました。
男から見ためんどくさい女ってこんな風に映ってるんだ、とか、女から見たわからずやな男ってこんな風に映ってるんだ、って自分を反省したくなってしまいます。
何十年も一緒にいても、会ったばっかりでも、“わかってくれない”って思うということは、男と女はやっぱり別の生き物で、わかり合うことはできないんじゃないかと思い知らされる。
でもわかり合えなくても、思いやることができればずっと一緒にいられるってことも気づかされる。
結婚とは?男と女って??夫婦とは???本物と偽物の違いとは????などなど、トスカーナを一日ぐるぐるまわって旅をしながら、頭の中もぐるぐるまわってしまう、そんな不思議な映画です。あと2~3回くらい観たいなぁ。
まだまだ結婚という世界に足を踏み入れるまでにだいぶかかりそうな私にとってはいい人生勉強になりました。
必見!だけど、いったん映画の世界に入り込んでしまうと、お互いの不満が噴出して帰りには喧嘩になりそうなので、同性同士かおひとり様で観に行くのがいいかもしれません。笑
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