「フランスにおける難民問題」君を想って海をゆく kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
フランスにおける難民問題
密航に失敗したクルド難民の少年ビラル(エヴェルディ)は裁判所で略式裁判を受け釈放されるが、すぐに海の方向へと向かう。水泳コーチのシモン(ランドン)と出会い、金を払ってコーチを頼む。何度かコーチを受けたビラル。シモンは彼の目論みを察知し、10時間もかかる無謀なことをやめろと諭す。最狭地点で34キロのドーバー海峡。やがて少年と心を通わせ、何度も自宅に泊めたりもしたシモン。しかし問題は山積み・・・
フランスにおける難民問題。港町のカレだけでイギリスに渡りたい難民が500人。難民の受け入れに関してはディテールがなかったけど、普通なら強制送還したいが祖国が戦争中という理由で送還できず野放し状態。妻マリオン(ダナ)とは離婚間近であったが、彼女は難民に食料を配給するボランティアをしていた。そんなボランティアも警察からマークされ一掃されようとしていたのだ。ビラルの恋人ミナの一家はなんとか許可されイギリスへ。多分、難民申請が上手く受理されたのだろう。
シモンは難民を泊めたという罪で逮捕。ビラルは自力でドーバー海峡を越えようとしたが保護される。そして、ミナからの電話で父親の命令で結婚させられると打ち明けられた・・・もう一度ビラルは海峡越えに挑戦するが、イギリス沿岸まで泳いだところ力尽きて死亡(なんとなくイギリス沿岸警備艇が原因のような気もするが詳細はない)。
ビラルが死んだことすら涙が流れないほど感情を抑えた作り。むしろ人々の難民に対する冷たさを描いた映画だ。タイトルの“WELCOME”がどこか白々しい響きを持っているほど。シモンのアパートの玄関にあるマットに書かれたWELCOMEは皮肉だとしか言いようがない。そして離婚調停集のマリオンにしても、難民に関わるなとシモンに警告するにも拘わらず自分はボランティアに精出してるのだ。これはもう慈愛のサガとでもいうべきものなのか・・・2人はそうした共通項がありながらも離婚する・・・これも現代を象徴すべき夫婦の問題か。これがまた恋人に会いたい一心で密航しようとする無謀な生き方と対照的で面白い。
タイトルも英語表記。クルド難民たちとの会話も英語。フランス人同士はフランス語だった。