「取り除かれないノイズ」嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
取り除かれないノイズ
肝心なセリフの瞬間にノイズが入る。何を言っているのか容易に想像できるが聞き取ることはできない。
これはみーくんとまーちゃんの二人の関係が淀みないクリーンさから遠いことを意味しているように感じた。
つまり二人の過去と現在はノイズだらけで、全然良くない状況だと言える。
出会いの瞬間からある意味でノイズだらけ。ノイズによって二人の関係は構築されているとみることができる。
前進するためにはノイズを取り除かなければならないが、ノイズをなくすことは関係の崩壊を引き起こすかもしれない。
そんな危うさ全開のドラマが面白かった。
心に傷を負った人たちの物語で、普通ならばどんより暗いドラマになりそうなところを明るい画と陽気さをもってポップに仕上げている作風は斬新。人死が出る作品のテンションではないんだよね。
この明るさは好意的に捉えているけれど、もちろん失われたこともある。それは、いくつかのサスペンス的展開をみせたときに驚いたりハラハラしたりあまり出来ないことだ。なんだか全てがジョークのようで、リアリティを失ってしまっているのだ。
ただ、ドラマ的にはリアリティを失うというのは求めていることだろうし、これで正しい。
全体的に面白かったと言っていいと思うけれど最終的なメッセージ性のようなものを感じられず、ただのサスペンス、ただのロマンスとは違うってところが作風だけになってしまっているような気がして、そこは残念。
挑戦的な試みだったと評価してもいいと思うが、バランスを取るのはさすがに難しかったようだ。
少し前の作品なのでキャストの若さが何か新鮮に感じた。
大政絢は印象的なルックスで演技も悪くないけどあまり売れなかったよね。映画で見たのはもしかして初めてかもしれない。