奇跡のレビュー・感想・評価
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子供たちの冒険と成長が微笑ましい
子供でも十人十色様々な事情と願いを持っている。その願いを叶えるために奇跡が起こる都市伝説のような話を信じ、子供なりに知恵を出して冒険をする。大人からしたらささやかな冒険でも、それは子供達を成長させる。冒険の中で、自分の願いに少しだけ客観的に向き合い成長する姿がとても微笑ましく感動した。いい映画でした。
子供の成長は輝かしい
社会風刺、時には厳しい現実を突き付ける是枝作品の中でも、物語全体通して明るい作品で、少し面食らった。親の離婚により、それぞれ離れ離れで暮らす兄弟だが、互いに良い友達にも恵まれ、強く生きている。そこに悲壮感はなく、特に弟は年頃なのに母親にも甘えるところもなく、逆に母親が寂しがる。当たり前の感情だと思うが。兄も一家四人で再び暮らすことを願っているが、ラスト結局願わなかった。何か吹っ切れたのか、旅行後のそれぞれ子どもたちの成長した顔が眩しい。分からなかったのは鹿児島に帰ってきた時、リュックの中を見て、3人一斉に走り出したのは犬が生き返ったのか??だとしたら、思いっきりファンタジーに振ってほしかった。エンドロールで橋本環奈を見て、初めて気付いた。
チルアウト系是枝映画の良作
是枝映画の中でもマイナーな作品だと思いますが、結構な逸品ではないでしょうか。
本作は『海街Diary』寄りのチルアウト映画でした。仕事帰りに飛び込んで鑑賞したため、のんびりしたムードが心地よく、前半は爆睡してしまいました。かろうじて覚えているのは、兄と弟が見た夢が、まるで正反対だったことくらいです。
兄は家族4人で暮らすことを夢見てますが、弟はぜんぜん思っておらず、福岡で楽しく適応しているのがイカしてました。弟たくましいですね〜。
また、ミュージシャン崩れのダメ父親をオダジョーが演じていたのですが、だらしないイケメンを演じさせると右に出るものはいないですね。クズ野郎だが優しい男なので、弟もともに暮らすのが楽しいのかもしれませんね。しかし、子ども手当でテメーのギターを買おうとしているのはいただけないぜ。
後半の冒険パートも楽しかったです。熊本で見知らぬおじいちゃんおばあちゃんに世話になるという超ご都合展開がありますが、ご都合展開がむしろ逆に心地よかったです。まぁ、全編にわたりご都合感は否めず、しかしそれがクオリティを下げているわけではないのが良いです。
子どもたちの演技も楽しげで好感を持ちました。女優を目指す女の子が目立ってましたが、あれで小4は無理があるのでは。また、女優の子よりも絵が好きな女の子の方が美少女じゃないの、と思って観ていましたが、鑑賞後に橋本環奈だったと知り、おったまげました。
小ネタも効いているし、総合的にハッピーな良作でした。前半寝ないで観ることができたら、もっと良さを体験できたかもしれません。残念。
離婚は子供にも悲しい影響を与える。
『奇跡』(2011)
上映当時、子供の兄弟漫才で人気のあった、「まえだまえだ」が映画出演という触れ込みがあったように追想するが、九州が舞台ではあるが、東日本大震災の年の映画である。これを2018年に観るわけだが、子供は特にこの7年は大きい。10歳が17歳になる。現在のそれぞれの「まえだ」がどういう感じなのか、調べないし把握していないが、7年は大きい。出演している橋本環奈なんかは大変化なのだろう。今年は広島や岡山や四国など西日本の広域な雨の災害が起きた。どうも2011年という年では、大震災を意図してしまう。そして、監督は是枝裕和。今年は『万引き家族』でカンヌの映画祭の最高の賞を得た。2011年は、これが上映されていた。タイトルはえらく映画にしても物語にしては、根本的な、たくさんありそうな言葉のそのもののタイトルである。『万引き家族』の影響ではないし、まだ観ていないのだが、是枝作品はこのところ、『海よりもまだ深く』と『そして父になる』を観たばかりである。それらもそうだが、家族の不安定がテーマだったりして、これも、両親の離婚から、兄弟が鹿児島と福岡で離ればなれになる。クランクインが東日本大震災発生より早かったのかも知れない。上映は6月にしている。もっと具体的には私の誕生日だったみたいで、大震災後すぐの誕生日がどうだったのかは今もう思い出せもしないが、鹿児島の桜島の噴火について兄がこだわっていて、東日本から北日本へは、上映当時は災害について語るシーンはちょっとどうだっただろうか。『あん』も観たはずだが、本木雅弘の娘が出演しているのは、思い出せない。これも調べた後なのでなんとなくわかった。是枝はドキュメンタリー映画も随分撮影したらしいが、子供のセリフのシーンが、一人一人が、ドキュメンタリーの問いかけられた後のような撮影の方法なのは一体どういう意図なのか。意図も別にないのかどうか。兄のほうが、母親の実家に戻ったのか、鹿児島で、祖父が橋爪功が演じ、祖父が樹木希林なわけか。本木雅弘の娘は樹木希林の孫でもある。弟は父親と一緒に福岡県にいる。子供たちは両親のよりを戻したいと思っている。両親はオダギリジョーと大塚寧々が演じている。メインはなんだか電車がすれ違う時の願い事が叶うとかで、兄弟それぞれ友達たちと学校をうまく早退して、その遂行なのか。子供たちが家出して冒険するような話になるが、警官に見つかるのに、老夫婦の大きな家で、本木雅弘の娘が孫だというと、老夫婦もそれに応じてしまうという、危険性のある話でもあるが、それで返されずに冒険は続く。九州に新幹線が走るという背景があったのか。それにしても、願いをかなえるための冒険の発端が、両親の離婚というのは悲しい。しかもここに複雑な心理があるが、兄弟とも、四人一緒に再び暮らせますようにと願わずに、別れる。離婚は子供たちにとっても悲しむべきことだ。
家族より、世界を選んでしもったんや、ごめん
映画「奇跡(2011)」(是枝裕和監督)から。
「鹿児島から「さくら」が260キロで走るだろ?
博多から「つばめ」が260キロで走るだろう?
それが初めてすれ違った時に、起こるんだよ。奇跡が。
すっごいエネルギーが生まれて、
それを見た人は、流れ星のように、願いが叶うんだよ」
九州新幹線の全線開通を題材に、そのすれ違う現場まで行き、
両親が離婚して離ればなれになった兄弟が、
また家族四人一緒に住めるように、と願う物語かと思いきや、
兄弟とも、新幹線がすれ違った瞬間、違うことを願った。
伏線は父親役のオダギリジョーさんが、離れて暮らしている兄に呟く。
「父ちゃんは航一に、自分の生活よりもっと大事なもんのある
人間になって欲しいやげとなぁ。たとえば、音楽とか世界とか・・」
願いごとって、大きければ大きいほど、素敵だな、って感じた。
「家族が一緒に暮らすこと。そんな当たり前が奇跡だった」のに、
もっと大きな大きな奇跡を願った兄弟。
ハッピーエンドなのかわからないけれど、これも神の計らいだなぁ。
ほんのりと幸せ。
子供を撮ることに定評のある是枝監督、今回は漫才兄弟のまえだまえだを
使って、実にのびのびとした子供時代を撮ることに成功している。
ただし昨今の、「いかにも子役」ちゃんたちが醸し出す世界観はまるでない。
アイドル化した動物たちが「いかにも」目線でカメラを見るような仕草もない。
そういった、完全化されたドラマ性を求めると…エ?何も起こらないじゃん。
という肩透かしを食らうことにもなる作品。でも、自分の子供時代を思えば、
あったんじゃないのかなぁ??こんなバカみたいな冒険とか、秘密行動とか、
親に嘘つく時は必ず「誰誰ちゃんの家で勉強会」^^;って、この常套句大好き。
奇跡が起こるから面白いんじゃなくて、奇跡を起こそうとするその行動力が、
いちいち子供らしくてい~じゃないのv私はこういう夢を持った子供が観られて
とても嬉しい。子供たちが夢に向かってキラキラしている姿は本当に愛らしい。
つまんねぇ。とか意味ねぇ。とか言う前に、旅にでも出てみなさいって、少年!
成長したいのなら、まず行動だ。(なに勧めてんだろ、私は^^;)
さて。。この兄弟くんが於かれた状況はけっこう過酷だ。
なんでこう…離婚するときに子供を分けたりするかなぁ~?といぶかってたら、
なんと!弟の意志で父親についたのだという(爆)なんでぇ?^^;
一緒に暮らしたくて仕方ない母親と兄は、なんとか弟を取り込もうとするが、
当の弟くんはどこ吹く風♪気ままな父親と自由を謳歌しつつ、過酷な現実にも
向き合っていた。弟くんの意見はこうだ。父親と母親がケンカばっかりしてた、
あの同居生活に戻るなら今の方が幸せだ。ちゃんと上手くやっとるで。ときた。
母親に逢いたい、兄貴に逢いたい、の前に家族の在り方を見極めてしまった。
このオトナ感^^;
そして兄の方はといえば、常に周りを大切に、家族の幸せを第一に、自分が
どうにかしたるねんで!と兄としての役割に対する責任感が強い。長男てのは
こういうものだろうな…まずは自分が。まずは頑張らねば。あ~この頼もしさ^^;
実の兄弟、ということもあってそのあたりは実に自然に演技ににじみ出ている。
ともすれば、漫才ギャグ?になりかねない芸達者な浮わつきを、周りの子供が
一気に素人まで押し下げる…^^;この絶妙な(爆)素人台詞や子供らしさもいい。
いや、ある意味この子たちも、見事に玄人→素人に為りきっているワケだけど。
子供目線で語るいい加減な夢や未来、奇跡、お金のやりくり(爆)ホントいいわ。
オトナになって…歳をとって…汚くなる(って言ったら聞こえが悪いけど^^;)
その手前、一生懸命何かを目指したり、まっすぐに諦めないで頑張ったり、
やめておきなさいよ。と思われることにも夢を描ける創造力は素晴らしい。
その、バカで下らなくて親に心配ばかりかけてきたような行動の一つ一つが、
それから何十年か経ってこんな風に映画やドラマや小説なんかになってみると、
同年代が皆して涙ぼろっぼろに流して(爆)喜び懐かしめるお話になるんだから。
子供時代の想い出は、み~んな宝物になるんだよ、少年!
今作では思いきり脇へと流されたオトナ名優の皆さん^^;、
彼らの見守る演技態勢も良かったですねー。かるかん作ったおじいちゃんv
ぼんやり。。うっすら。。あ、ほんのり!!なんてイイ言葉なんだろ。
幸せも未来も、まさにかるかんのように…ゆったりと、完成されるんじゃないの。
それでいいんじゃないかと思う。
今の子供たちは頭がいいから(爆)実際に起きていることを本当は理解している。
どうにもならない世知辛い現実も、本当はオトナ以上に敏感に感じとっている。
それでも笑顔で頑張ろうとする子供たちに何かを教えられた気分になる作品だ。
そうだ世界平和、奇跡を祈ろう、少年!
(こんな可愛い子供たちが生まれてきたことが奇跡。生きていることも奇跡。)
今日の一句『たかがガキ されどガキ行く 夢の旅』
しっかり者の兄は不器用で哀愁を感じさせる陰を、お調子者の弟はスルリと世渡りを器用にこなす陽をと、漫才では過剰気味だった売りの愛嬌を各々のキャラクターに投影させ、個性をしっかり確立している。
『誰も知らない』で子役の素の人柄を導き出した是枝裕和ならではの演出論が見事に発揮された賜物と云えよう。
また、阿部寛を始めとする是枝組の常連に加え、長澤まさみetc.新規メンバーが揃った豪華でかつ、個性派の大人達が子供達を囲んでいく事で、緩やかな反発力を芽生えさせ、自立への旅へと駆り立てるプロセスを、繊細でありながら大胆に表現していく。
特に、『歩いても歩いても』に引き続いて、トボケた祖母を飄々と演じた樹木希林は、境遇に苦悩する兄弟の憂鬱な気持ちを和らげる貴重な存在感を放ち、笑いを誘う。
シビアな現実を前に否応無しにズル賢く大人へと成長していくそれぞれの一歩一歩が、純粋無垢な幼き夢と対峙させる不思議な御伽噺に仕上がっていて興味深い。
大人達の都合でハメ込まれた社会に対し、適合と反発を織り交ぜながら、自己のアイデンティティを構築させていく子供の進歩を、《旅》に照らし合わせて展開させる創造力は、驚きに似た共感を産ませ、惹き付けていく。
熊本に集合し、いざメインの冒険が始まると、行き当たりばったりの中に出来過ぎた物語軸を感じ、やや冷めてしまった。
良い意味でも悪い意味でも
「こいつらクソガキやな」
って思わせるガキ本来のニクたらしい生意気な部分に欠ける。
あんなに周りに迷惑かけたのに結局、エエ子のまんまなのだ。
旅に大人がすんなり理解してくれる距離感にも疑問は尽きない。
しかし、あの計算高いアドリブ能力こそ今作が描こうとした子供のサバイバル術が象徴されていて、表情がより活き活きしていた気もしたから、小難しく観る事自体、野暮なのである。
自由奔放な人間性+緻密な計算×(応酬+共存)=面白味
は、漫才でも映画でも当てはまる方程式なのかもしれない。
いや、人生におけるテーマとも云えよう。
どんなに辛い人生でもオモロいオチで決着が付けれたら、幸福なんやけどな…。
ボヤキながら駅で独り佇む私は、「富士山噴火して、全部チャラなったらエエねん」と前田の兄貴のように青空を見上げた。
まだまだガキのまんまやなと実感した帰路に短歌を一首。
『擦れ違ふ 風を奇跡と 云ふのなら 大人になるのは 奇跡なんかな?』 by全竜
どんな奇跡が・・・
主演の「まえだまえだ」の素の表情がとても良い。
お笑い芸人として活躍中の二人。
先輩芸人相手に話している場面を見たことがあるが、機転が利いていて、よく気が付き、それでいて嫌みのない、そんな二人だった。
この映画中の二人と同じだ。
少し繊細な兄の航一。
天真爛漫で、ちゃっかり者で、しっかり者の弟。
両親に対する見方にも、違いがある。
そんな二人の笑いを誘う話術がとても素敵だ。
もう一度家族4人で暮らしたい!!
この願いを叶えるべく兄の航一は、ある瞬間に望みを託す。
子供達だけの冒険の旅の始まりだ。
起伏が少なかったようにも思うが、これくらいで良いのでしょう。
まだ幼稚園児だった頃、兄と二人で電車の線路沿いに、遠くまで大冒険したことを思い出した。
子供って、こういう冒険をして、大きく成長するものなんだろうか。
≪ぼんやり≫が≪ほんのり≫に変わる奇跡。
ステキです。
子供達を引き立てる豪華な大人の俳優さん達。
お見事です。
家族のあり方を描く傑作
本作は是枝裕和監督による「家族」をテーマにしたドラマである。大物俳優が配役されていたり、「奇跡」というタイトルが「感動を誘う物語」であることを想起させてしまったり、あるいは「九州新幹線」とタイアップして作られた映画であることから、それらを目当てに劇場を訪れた人が多いだろうが、これから鑑賞される方は過去の是枝作品を味わってからご覧になることを強く薦めたい。個人を描くドキュメンタリーの雰囲気は「ワンダフルライフ」であり、子どもへの眼差しは「誰も知らない」であり、家族の描き方は「歩いても、歩いても」である。「奇跡」はそれに続く作品であり、是枝作品を知る人なら、この作品は集大成のように感じられることだろう。あるいは、是枝作品の入門として鑑賞し、続けて過去の作品を追いかける楽しみ方もいいかもしれない。一つだけ確かなことは、「俳優」や「奇跡」や「新幹線」を期待して観ていただきたくないということだ。ぜひ作品全体を味わってほしい。
多くの人に観てもらうことを意識しているのだろうか、是枝監督のファンであれば、本作は少々説明が過剰ではないかと思われる箇所や、音楽の挿入がくどく感じられる部分があるかもしれない。たとえば映画の冒頭で所在地が表示されたり、火山噴火のアニメーションが挿入された。おそらくそのような表現に頼らずに制作することも可能だったのではないか、いやむしろその方が変にファンタジー色を帯びずに人間を描くドラマとして成立させることができただろう。観客の知性や想像力を信じるか、それとも「わかりやすさ」を選ぶのかは難しいところだが、観客を限定せず、子どもからお年寄りまで世代を超えて楽しめる作品に仕上がっているのは確かだ。子どもの躍動感と相まって、いままでとは違う味わいの作品となっている。
ただし、これらの事柄はこれまでの是枝ファンを裏切る結果にはなっていないだろう。両親の離婚を契機に離ればなれに暮らす家族とその日常を、「子ども」というメディアを介して確かに描いている。これだけで十分であり、「奇跡」はまさにそのような映画である。奇跡が起きようが起きまいが、新幹線が登場しようがしまいが、作品の評価にはなんら影響はない。(むしろない方がいいくらいであり、まさに本作はそのように作られているのが素晴らしい。)
家族と一緒に暮らすことはできないことを兄弟ともに知りながら、それでもその奇跡を信じて旅をする物語、と本作を簡単に語ることは可能なのだが、そのようにだけ語ることは明らかに過小評価である。実際、旅のシーンは物足りなさを感じるほど少なく、目的地へもトラックに乗ってあっという間に着いてしまう。重要なのは、奇跡を思い願いをかける場面と、その後の子どもの、家族の心の変化の方である。故に、冒険に至るまでの子どもの描き方、家族の描き方は非常に丁寧である。これを冗長と感じるかどうかは観る側の心の持ち方次第である。新幹線の轟音と共に静かに現れる(洗われる、あるいは失われる)思いを、この映画で確かめてほしい。泣ける人もいれば、元気に人もいるだろう。何を受け取るかは、観客一人ひとりに委ねられている。説明が過剰と先に記したが、兄弟の願いが最終的にどのように変わったのかはわからないように作られている点は好印象だ。
本作はストーリーも上質だが、それにも況して子どもたちの演技や自然な振る舞いに心を奪われてしまう。繊細で多感な性格の兄・航一、元気いっぱいの弟・龍之介をまえだまえだ(前田航基、前田旺志郎)が見事に演じている。うまく新しい環境に馴染めず家族一緒に暮らすことを考えるあまりに「桜島の噴火」という非現実的な奇跡を願ってしまう兄、家族が離ればなれになったことを適当に割り切って今を明るく楽しく生きようとする弟という設定は、まさにこの二人のために作られたような設定だ。それが見事に奏功し、彼らの魅力が十二分に発揮されていることは疑いようがない。二人は対照的な性格ではあるが、電話のシーンや駅のホームでの再会シーン、軒先でのポテトチップスのやり取りや会話における絶妙な間合いは、あの兄弟でなければ実現しえなかったものだろう。テレビでの露出が多い子役だが、この映画でしか感じられない魅力が非常に多かった。それは編集の妙という以前に、本当に魅力的な兄弟であることを物語っている。ぜひ先入観を捨てて観ていただきたい。
(私は映画序盤、火山灰に慣れず「意味わからんわ」と電話越しにぼやく兄を、アイスを食べながら「意味わからんなあ」と返す弟の姿を見たささやかな瞬間に、二人の魅力に引き込まれてしまった。)
ベテランである俳優が子どもたちの脇を固める形で好演しているのも、非常に印象的である。子どもを描くことに重点がおかれているだけに、時に背中や手などしか映らない場面も多い贅沢な作りだが、その姿や仕草でキャラクターを十分に演じられている。役それぞれに、どこか抜けていて頼りない部分のある大人を演じることで、子どもの姿が自然と浮かび上がっている。特に橋爪功、樹木希林の老夫婦の無駄のない演技は素晴らしいと感じた。
いくらかのファンタジーは含まれつつも、家族の日常と子どもたちの変化を描く本作を、この文章で何度もすばらしいと書いた。けれども、それはやはり日常である。それが素晴らしいのだということに気づかされる映画である。困難な現実や理性が邪魔をして、日常に嫌気が差している人は、この映画が今年最大の救済になるだろう。
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