劇場公開日 2010年12月18日

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「成宮さんほど」ばかもの grassryuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5成宮さんほど

2011年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

成宮さんみたいにかっこいいわけじゃないのですが…。
恥ずかしい話を書きます。

僕もアルコール依存症でした。
もう飲まなくなって3年弱になりますが、飲んでた頃を思い出すといまだに恥ずかしいやら情けないやら…、穴があったら入って一生出てきたくないぐらい恥ずかしい思い出ばかりが残るだけ、の何の価値もない飲酒生活を過ごしてきました。

僕の知り合いの一人は、僕と同じ酒におぼれた人生からつまらない傷害事件を起こしてしまい、依存症も相まってうつ病を発症、精神病院に強制入院させられた挙句に強制的に断酒を強いられたことにより、一層精神に障害を来してしまったか、入院後半年を経て、首つり自殺をしてしまいました。

僕がアルコール依存症に至ったきっかけは、成宮さん演じるヒデ同様に失恋でした。酒を飲んでいれば、彼女のことが忘れられる、楽しい気分がもたらされ失恋の嫌な記憶が失われていく、…やがて目的は行動へと昇華し逆転し、記憶が飛ぶほど飲むことが常態となっていったのです。
酒を飲んでは暴力を振るう父への潜在的な恐れ、アルコール依存症だった父のようにはならないぞという強い気持ちが逆にアダとなり強迫観念をもたらしたことも、酒への依存を一層強めた要因だと思います。酒に飲まれず父を凌駕するうわばみになってやるぞと意気込んではみたものの、やはり同じ血を分けたもの、父と同じアリ地獄に陥ってしまったわけです。

いずれもいいわけは全くきくものでないことは重々承知しています。
すべて自分の弱さに起因するものであることはいうまでもありません。
これまでの人生を心から反省しているものです。

知り合いの死、さらに酒井法子さんの覚せい剤依存の実態を目の当たりにしたことも大きなきっかけになり、自分の弱さに気が付いた3年前、酒から自然と足が遠のきました。
飲酒運転を規制する機運が社会全体にいや増しに高まった頃に、深夜に運転せざるを得なかった状況に置かれてしまったことも、酒から足を洗うことができた理由の一つです。これも恋愛が原因です。

僕は女で酒におぼれ人生を棒にふり、女で酒から卒業し残りの人生を「恥をさらしながら」細々と生きていくことになったのです。

成宮さん演じるヒデのような愛され方をして、そして心より彼女を愛し、酒から身を引く、なんてハッピーエンドってわけにはいかないのですが…。

内田有紀さん、好演でした。
ずっとずっと一緒にいたかっただろうに、別れなければよかったのに、ヒデに「恥をさらさせて」嫌な思いをさせてまでして、強引に自ら身を引いて人の妻になっていく。年の違い、自分との釣り合いの落差、…人間って考えなくてもいいことを考えてしまって、すれ違っていく、ものですものね。
この辺りをしつこからず、わかりやすく、演じていて、とてもすがすがしかったと思います。
後半の彼女は近寄りがたい、妖艶さまで漂わせ、これがあの元アイドルか、と思わせるほどの存在感、「悪人」での深津絵里さんと双璧でしょう。
すばらしかったです。

さまざまな葛藤を経て…、
でもやっぱり納まりのいいもとの鞘に収まっていく。
自分の人生と引き比べ、とてもとても考えさせられた映画でした。
もちろん映画としての完成度もとても高く、今年の一本といっても過言ではないでしょう。

grassryu