「盲導犬の一生。」パートナーズ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
盲導犬の一生。
盲導犬と聞いてすぐ思い浮かぶのが、子供の頃読んだ漫画。
作者もタイトルも覚えていないその物語が、未だに心の奥に
残っている。なぜだか今作の設定に共通点が多いのに気付く。
確か主人公はピアニストで、彼女の傍らにはいつも盲導犬が
ついていた。演奏が終わると尻尾で床を叩いて拍手をする犬が
お気に入りの彼女だったが、ある日事故に巻き込まれてしまう。
盲導犬は、その事故から彼女を守らなければならなかったのに、
怯えて逃げ出してしまった。指を怪我した彼女はピアノが弾けず、
今後、この犬ではダメだと訓練所から新たな犬を差し出される。
最初の犬はラブラドールだったが、次の犬はシェパードだった。
彼女は前の犬でなければイヤだ!と駄々をこねて周囲を困らせ、
触り心地からして固くて嫌い!といって新しい盲導犬をいじめる。
彼女に馴染もうと頑張る犬を毛嫌いし、叩いたり無視する彼女を
子供心に心底憎いと思った。なんてイヤなオンナなんだと…^^;
ある日同じように事故に巻き込まれた彼女を、犬は身体を張って
助けるのだが、その恩も顧みず、この犬が私を突き飛ばした!と
いって周囲に取り替えてほしい!と訴え始める。こんなに相性が
悪いのでは犬の方が可哀相すぎると、周囲も考え始めるが…。
けっきょく最後、どうなったかというと(まぁ漫画だからそうかと)
このシェパード君が、陰でものすごい努力をするのだ。
つまり自分のパートナーである飼い主さまを徹底して守るために、
犬の方が努力を重ねて、彼女に好かれようと頑張ったのである。
泣けた…。というか、ここまで飼い主さまに尽くし通す盲導犬って
何なんだろうかと、考えてしまった。どういう育ち方をしたのかと。
そしてラスト。以前の犬と同じリズムで、尻尾で床を叩くのである。
それを聞いたピアニストは衝撃を受け、今迄の酷い仕打ちを悔い、
盲導犬を抱きしめて、真のパートナーになりました。…という話。
あ~すいません^^;長くて。しかも、映画の感想になってない(爆)
なにが言いたかったのかというと、今作でチエのパートナーになる
事故で失明したボーカリストっていうのがホントに可愛くない女で^^;
まさに↑のようなことをチエや周りの人間にするのだ。
いい人ばかりが盲導犬を待っている訳ではない…それはそうだ。
でもあてがわれた盲導犬は、懸命にその人をサポートする。それが
仕事だから。そういう風に育てられてきたから。彼らの宿命である。
そんな盲導犬たちの一生を、ややドラマチックに今作では見せるが、
ほんの一部でも、彼らの仕事ぶりに触れて感謝し、彼らの生涯を
最期までちゃんと見てあげてほしいと思った。パピーウォーカーや
訓練士を経て、彼らが行き着くのは眼を必要とする人々のところ。
根岸季衣が老犬になったパートナー犬を、富士山麓の養老院?に
連れていき(こういう所があるのも初めて知った)お別れをする場面、
私もおいおい泣けてしまった。彼らはやっとそこからの余生を普通
の犬として過ごせるのだ。お疲れさま、そしてありがとうである。
できれば最期まで看とってやりたいのが本望だが、新しい盲導犬と
彼らが一緒に暮らすことはできないそうである。思えば…生まれて
すぐに母犬と離され、育ての親、訓練士、パートナーと渡りあるき、
最期は他犬たちと養老院…という、出逢いと別れの生涯を歩むのが
盲導犬の一生ということになる。可哀相だとか不幸だとか、それは
私などに言えることではないと思ったが、運命を受け入れる盲導犬
に比べて、酷く勝手で、我儘で、迷惑ばかりかける人間さまだから、
どうか彼らの一生に幸多かれと、愛されんことを祈るばかりである。
映画の感想よりも盲導犬への賛辞ばかりの感想になってしまった^^;
まぁ物語の方は…可もなく不可もなくという感じで、リアルに沿った
描き方をしている反面(ワーキングプア・自殺など)、恋愛描写などの
不必要なてこ入れも多く、まとまりのいい作品とはいえない感じだ。
犬と人間のどちらに重きを置くかで話の色合いは変わってしまうが、
タイトルにあるパートナーズに於いての歩みと捉えるなら、もっと
淡々とした中で感動をさせる余幅がとれたかな、と少し残念である。
ともあれ盲導犬は、本当によく頑張っていた。若者も、頑張れー!
(食いっぱぐれのない仕事には、それなりの苦労がつきものだから)