機動戦士ガンダムUC episode2「赤い彗星」のレビュー・感想・評価
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魂レベルでは全人類はわかりあえるが肉体レベルではわかりあえないと感じた(長文)
BSで無料放送だったので視聴。面白かった。戦争映画は地上と天国との距離が近い。敵も味方も死を意識しているので霊魂状態に近くなり乗っているモビルスーツ(ガンダム作品に登場する人型ロボット兵器)が魂の器として存在感を発揮する。モビルスーツとそれを操縦するパイロットは肉体と魂の関係にある。モビルスーツどうしの宇宙空間での戦闘は広大な宇宙で人間の存在とはいったいどうゆうものかと問いかけているように感じられる。人間は肉体(モビルスーツ)に魂(パイロット)が宿った存在であり、たとえ肉体が戦争を起こすとしてもその魂は対話をすることができる。魂のレベルでは全人類はわかりあえるが肉体のレベルではわかりあえないと私はこの作品を見て感じた。(その理由)人間という存在は肉体と魂に分離しており肉体と魂の存在の矛盾が戦争を起こす。肉体はこの世に存在したがるが魂はその必要はない。魂は仲良くしたがるが、肉体はそれを許さない。この矛盾が人類が戦争する根本原因だから人類は戦い続ける。一度天国に行かないと人類は争いをやめない。
個人的にはこの作品はシャアとハマーンが二人とも登場する予定だったまぼろしの”完全版”「機動戦士ガンダムZZ」のような作品だと感じた。テレビアニメ「機動戦士ガンダムZZ」(1986年)はシャアが登場せず中途半端な終わり方だった。ハマーンも主人公ジュドーの味方になってくれそうだったのにならなかったのは残念だった。もしも「機動戦士ガンダムZZ」にシャアが登場していれば一番の名作ガンダム作品になっていたはずだと思う。そういう意味ではこの「機動戦士ガンダムUC」は私の好きなガンダムシリーズかもしれない。
あらすじ: 宇宙戦争に巻き込まれた主人公の少年バナージ・リンクスが様々な背景を持つ軍人たちと出会い精神的に成長していく。行方不明になったはずの伝説の英雄に顔や能力がそっくりの謎の首領フル・フロンタルや上官の命令に絶対服従する冷酷な軍人だがときおり主人公に優しさを見せるマリーダ・クルスなどとの出会いで少年バナージは絶対的正義も悪も存在しない混とんとした世界を学習していく。
評価: 点数3.5。お勧めします。巨大ロボットどうしの宇宙戦争の映像の迫力に心を奪われる。長編の物語はまだ序盤で登場人物に謎が多く興味深く作品を観ることができる。難点は場面のつながりがズムーズではなく登場人物について深く掘り下げがないままに次の場面に進むことが多いこと。
視聴:液晶テレビ(無料BS放送) 初視聴日:2025年8月24日 視聴回数:1(早送りあり)
2025/09/10 追記1:
この物語は過去作キャラ以外のキャラクターの個性が薄い。パッと見でキャラクターの個性を説明できていないのはこの作品の作りこみの甘さによるものと思われる。たとえばオードリーやフル・フロンタルなど主要人物の個性を出すには場合にはもっといろいろな方法がある。対照的なキャラクターを登場させたり、その登場人物がすごく不幸に見舞われたりすると注目されそのキャラクターの個性が伝わりやすい。この作品は登場人物の一瞬の動きや表情やセリフなどでもまだまだ改善の余地があり作りこめると思った。この作品は多くのキャラが棒立ちしてすまし顔で話す場面が多いので登場人物の説明が足りてない気がする。オードリーことミネバ・ザビなどはその典型例であり彼女はもっと泣いたり笑ったりして個性を表現してもよかった。彼女は冷静すぎてよくわからないキャラになっている。ミネバは過去作でもアクシズのお飾り君主だったが本作でもお飾りポジションの域を脱していない。ミネバの魅力は育ちの良さなのでそれを生かしてさすがザビ家と思わせる活躍の場がほしかったと思う。たとえばラピュタのシータみたいに秘密の合言葉をしっているとか、ナウシカのナウシカみたいに「姫様」とジオンの兵士に呼ばれるとかである。フル・フロンタルもシャアの偽物なのでミネバも偽物ということにして自分が偽物と途中で気が付いて彼女自身悩んで葛藤したほうが生き生きしたキャラクターになったであろう。
追記2:
ネットのネタバレ解説を見てしまいラプラスの箱というものが憲法の条文であることが判明しこの物語は憲法改正の話であるということがわかって色々と考えてしまった。日本国憲法を改正しようとする話題はニュースでよくとりあげられる。憲法とは近代国家が国家であるための重要なものなのでその内容を書き換えたり付け加えたりすることはおおげさに言っても国家そのものを変える可能性を持っている。憲法のおかげで1億2千万人の日本人が規律をもって生きていけているので憲法が国民に与える影響はとても大きい。その日本国憲法を書き換えるということは日本という国を作り替えるということと同じである。その重大性がわかるとこの「機動戦士ガンダムUC」の物語は面白くなってくる。ラプラスの箱は日本国憲法のいわば憲法改正の条文である。ラプラスの箱解放によって新しく宇宙憲法の条文を付け加えると地球国家が変わってしまい今までの既得権益がなくなるので必死でそれをやめさせようとするのがバナージたちの敵なのである。バナージたちは憲法改正派で、バナージの敵は憲法改正反対派であると思った。ラプラスの条文は宇宙人に参政権を与えるというものであったがこの映画を見る人によってこの条文が自衛隊に重なって見えたり憲法9条であったり移民外国人であったりすると思う。ともあれ秘匿された憲法の条文を世間に公開するかしないかというのがこの「機動戦士ガンダムUC」の物語の核心であった。
追記3:
実在のピエール゠シモン・ラプラスは18世紀のフランスの数学者、物理学者、天文学者である。彼はこの世のすべての未来は物理学的数学的計算によって予測でき、未来は決定されており、未来は変えることができないという趣旨の「ラプラスの悪魔」として知られる未来決定論を唱えた人物として知られている。今日(こんにち)ではその概念は古典物理学的として現代物理学によって否定されている。この「機動戦士ガンダムUC」で作者が「ラプラスの箱」と名をつけたということは作者は未来決定論をこの作品で否定したかったのかもしれない。人類の未来は予測不能であり続けるので、アースノイド(地球生まれの人類)がスペースノイド(宇宙生まれの新人類)を永久に支配することはできない。未来は決定されていないということは革命もOKということである。ピエール゠シモン・ラプラスは貴族政権を打倒したフランスの革命時代を生きた人物である。この時代のヨーロッパは神が人類の未来をすべて決めてしまっているので王族や宗教勢力などのキリスト教的権威に絶対に文句が言えない社会であった。学者のラプラスでさえもこのキリスト教的決定論の影響を受けていたにちがいない。「フランス革命」と「ラプラスの悪魔」を連想させるこの「機動戦士ガンダムUC」のストーリーで作者が伝えたかったことは未来は決定されているというラプラスの悪魔は存在しないので人類の未来は変えることができるということかもしれないと私は思った。人類の未来を縛る「ラプラスの箱」を開放してラプラスの生きたフランス革命時代のように神に頼らず人類が自分たちで未来をつくる「人類の革命」を成し遂げようという思いを作者はこの作品にこめたのかもしれない。
追記4:
人類がわかりあえるとはどういうことか。現在の地球には81億人の人類が住んでいるといわれている。ものすごい数の人類がひとりひとり意思をもって日々生活しているのだから争いは毎日絶えず起こるのが当然である。地球という限られた空間で81億人の人類が空気分子のようにランダムに動いていたらぶつかるのが当たり前である。空気分子と違うのは人類は賢いのでコミュニケーションをとり衝突を回避することができる点である。このコミュニケーションの精度を上げていくのが人類生存のカギであろう。人類がわかりあえるとはコミュニケーションの精度を上げるということである。インターネットとスマホの普及によって全人類のコミュニケーションの精度が上がっている。人類がわかりあえるということに近づいている気がするが現実はうまくいかないのである。
追記5:
私はこの映画を観て魂と肉体の関係というものを考えるようになった。フル・フロンタルは劇中のセリフでみずからを「器」と言った。器とは人間における魂の入れ物つまり肉体のことである。フル・フロンタルは自分のことを魂が抜けた肉体のみのシャア・アズナブルだと言っているのだと思った。シャア・アズナブルはアニメ映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年)において「アクシズ・ショック」と呼ばれる現象に巻き込まれ魂と肉体が分離し、その魂は緑色の光となって周囲の魂と合体し地球落下軌道の隕石の軌道をそらす奇跡を起こしたのだった。「アクシズ・ショック」で残されたシャア・アズナブルの肉体に新たな魂が入り込んだのがフル・フロンタルであると私は思った。フル・フロンタルの意味は「全裸」であるというのでやはり肉体と関係があるのであろう。実際のシャア・アズナブルはザビ家へ復讐したのにミネバ・ザビを擁護したりとよくわからない行動をとる人物だった。シャアはジオン軍士官となってジオン軍に潜り込みザビ家へ復讐を果たした後今度は地球連邦軍に潜り込みエゥーゴと呼ばれる宇宙人差別反対組織に参加したりもした。その後エゥーゴを離れ自らネオ・ジオンを建国し地球連邦に武力闘争を開始したが道半ばで行方不明となった。
追記6:
シャア・アズナブルの再来ことフル・フロンタルは人々の思いを受け止める器である。なぜ人々はシャア・アズナブルが好きなのか。それは彼の生き様はかっこいいからだ。彼は自分の信念をもち自分の信念に従って一人でも集団でも気苦労なしにそつなく仕事をこなせる。彼はパートナーや家族はいないがそういうものに頼らなくても精神的に大丈夫な彼は理想の気楽な人生の生きかたの模範なのだろう。現実の普通の人々は社会の上下関係や家族やパートナーとのあつれきで苦労しながら人生を生きなくてはならない。彼は現代日本人の悩ましい生き方の真逆だから人気があるのだと思う。シャア・アズナブルは「アクシズ・ショック」事件で行方不明になったが世間はいまだに彼を求めていた。フル・フロンタルはそのために作られたシャアの魂のない肉体だけの器なのだ。フル・フロンタルの中にはシャアの魂のかわりに人々の思いが入っている。人々の思いとは魂の集合体であり「アクシズ・ショック」の奇跡を起こしたあの緑色の光のことである。おそらくフル・フロンタルはクローン強化人間であるがその魂が人々の思いでできているので通常の強化人間とは異なる。ニュータイプ人類と比較してフル・フロンタルは「ニュー・クローン強化人間」と呼べるのではないだろうかニュー・クローン強化人間のフル・フロンタルはニュータイプ人類の主人公バナージ・リンクスと対決する運命にある。二人のこの対照的な人種を意識しながらこの作品を観ると味わい深くなってよいであろう。
追記7:
本作の主人公バナージ・リンクスの乗るユニコーンガンダムは前作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年)での主人公アムロ・レイの乗るニューガンダムの機体コンセプトをさらにパワーアップさせたような機体である。ニューガンダムは「サイコミュ」と呼ばれるオカルト超技術を使い人間のもつ魂の精神パワーを最大限に発揮するように作られている。サイコミュは「サイコ」と「コミュニケーション」の造語でありサイコミュとは「精神通信」と言い換えることができる。音波通信、電気通信、電磁波通信、量子通信と人類が高めてきた通信技術の到達点の架空の通信である。
「サイコ」とは何か:
「サイコ(psycho)」の主な意味は、ギリシャ語の「精神」「魂」に由来する「心理的な」「精神的な」という意味と、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『サイコ』に端を発し、日本で「精神異常」や「精神病者」を指す略語として広まった意味の2つがあります。(AI回答より)
まとめて評価したので1作目と同じ
富野節とは違う聞きやすい、それでいて深い語りが各インテリキャラから出てきて、ガンダムらしい濃厚なストーリーです。
全体を通じて人の死や恋愛で心情が揺れ動く様子が、けれん見なく表現されてるので、一気見してもしんどさが無いです。
見やすさという点ではアニメーションも優秀です。
1話目の主人公たちをマリーダが追いかけるシーンだけで、この作品は観るに値すると感じました。
あれだけでマリーダの能力、立場、キャラが伝わるんですよね。
特に宇宙移民を「参政権の剥奪」と捉えるのは面白いです。
小説を読んだ人からすると詰め込みすぎだそうですが、ダラダラせずしっかりした話になってるように見えました。
赤い人
赤い人を楽しまないと
3点な作品。
いよいよMS戦です。
圧倒的クオリティでの描写は
ファンそして、ファンだった人を楽しませるのに充分な内容。
やっぱり、小説版で
詳細は知って欲しいと思ってしまいますが、
割り切らないと完結しませんからね。
ここからが本番です。
イイ!
原作を先に読んで、アニメを後に観ることになってしまった友人のススメで、敢えてアニメを先に観て、それから原作を読んでいるのですが、そのほうがいい気がします。
今作は、宇宙世紀の始まりから描かれ、この世界で多大な影響をあたえている企業「
アナハイム・エレクトロニクス」の裏事情まで語られ、宇宙世紀ガンダム好きには堪らないシリーズといえると思います。
そこで、エピソード2では「赤い彗星」のタイトル・・・とてもイイですね☆
早くエピソード3が観たいです!
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