「復讐の連鎖」ヘヴンズ ストーリー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
復讐の連鎖
・第1章 夏空とオシッコ
8歳のサト。友だちに海に突き落とされるという衝撃のシーンから。サトは両親と姉を殺され、祖父ソウイチ(柄本明)に引き取られることになったのだ。その道中、高層住宅街でソウイチが薬を買いに行っている間にサトがいなくなってしまう。折しも、光市母子殺害事件をモチーフにした事件で犯人を殺してやりたいと訴える夫のトモキの姿がテレビに映し出され、サトは殺したい相手が自殺したため自分は長生きすることを誓うのだった。
・第2章 桜と雪だるま
妻子を殺害された男トモキ(長谷川)が桜の木を切って倒れた。花見の宴席でそんな光景を見た警官のカイジマ(村上淳)。彼の裏稼業は復讐代行業。雪深い廃墟での波田(佐藤浩市)とのやりとりが面白い。また桜吹雪の町、女に向かってカイジマの過去が語られる。拳銃強盗しようとした男を撃ってしまったこと。なぜか息子に雪だるまをおみやげとして渡す・・・
・第3章 雨粒とRock
難聴のギタリスト・タエ(菜葉菜)。彼氏が女を連れ込んだため、カギを付け替えるため鍵屋のトモキを呼んだ。寂しさを紛らわせるため、レイプされたと偽ってトモキをライブ会場まで来させ、感動させる場所に連れてってくれと頼む。暗い影を引きずるトモキに惹かれていくタエ。しかし、ここでは無理にキスしただけで、進展しない・・・
・第4章 船とチャリとセミのぬけ殻
ある船着き場に16歳になったサトがやってきた。セミの抜け殻を虫の死体と呼ぶ少年がいた。少年の自転車を借り、自分の“ヒーロー”を探しだした。トモキの捨てたゴミ袋からタバコの吸殻を取りだし咥えて寝そべるサト。自転車の少年はカイジマの息子ハルキ。人から金を盗もうとしたりして、小学生なのにグレていた・・・
トモキはタエと結婚し、一人の娘をもうけていた。そんな彼に犯人の少年が出所したことを伝えたサト。すっかり大人になり、小さな幸せを掴んでいた矢先のことだった。
・第5章 おち葉と人形
人形作家の恭子(山崎ハコ)は若年性アルツハイマーと診断された。ある日、恭子は病院のテレビで理由なき殺人を犯した少年の言葉を知る。「これから生まれてくる人間にも僕のことを覚えていてほしい」。少年に面会を求め、やがて手紙のやりとりが許された。そして、面会した恭子。少年ミツオ(忍成修吾)が出所すると、彼を養子にして、自分の介護を彼にまかせる恭子であった・・・
・第6章 クリスマス☆プレゼント
カイジマは死なせてしまった強盗の遺族チホ(根岸季衣)に毎月金を渡していた。そんなことに金を使っていたものだから、またしても盗みを働き怪我をしたハルキ。一方、トモキとサトは頻繁に接触。サトは学校でもいじめられ、精神的に生きる希望をトモキに託していたようだ。そしてミツオとの最初の接触。あやまりにも来ないミツオをなじるトモキであったが何もできずにいた。ミツオはミツオで、建築現場で金銭的に虐げられていたようだ・・・
・第7章 空にいちばん近い町1 復讐
恭子の故郷の病院に連れていったミツオ。復讐の時は近いはずなのに、ミツオを追い回して捕まえて、どうすることもできない。そして恭子はトモキがビニール袋を被せたために死なせてしまい、一つの男の死体が発見される。
・第8章 空にいちばん近い町2 復讐の復讐は何?
トモキが壊れたと言って妻のタエと娘は出ていく。ミツオは恭子さんを殺されたことで逆にトモキに復讐しようとする。チホの娘であるカナ(江口のりこ)が死んだカイジマの家を訪れて、偶然にも拳銃を手に入れたものだから、それがミツオの手に渡り、血みどろの決闘となってしまったのだ。
・第9章 ヘヴンズ・ストーリー
チホは無事に子供を産んで、サトは母の手紙にあった住所を訪ねる旅に出た。バスを降りた丘には死んだ者ばかり。お面を被った舞台が幻想的に表現されていたが、その親子はサトの家族だった。
復讐の連鎖を断ち切るというテーマだけではなく、多くの俳優を使って、人間がどこかで繋がっている奇縁をも盛り込んであった。殺された者、その遺族。その痛みは当事者じゃなきゃわからないと思う。利己的であり、共感できる人間はほとんどいないのもすごいことだ。