「バカバカしいほど、壮大な正義のサーガ」電人ザボーガー 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
バカバカしいほど、壮大な正義のサーガ
チャチやけど愛くるしいオリジナルの魅力を踏襲しつつ、最新のCG特撮と『魁!クロマティ高校』を手掛けた井口組らしい脱力ギャグをふんだんに盛り込み、唖然とする客を否応無しに引きずり込んでいく。
これでは単なるB級ヒーローを創り直しただけに過ぎないが、今作の大きな特徴は、主人公のサーガ的2部制をを用いている点であろう。
溢れるパワーと正義感で意気揚々と悪の組織『シグマ』を打ち負かす青年期と、敵の術中にハマり、全てを失い堕落している中年期と分かれて繰り出される死闘の歴史は、バカバカしいながらも大河ドラマのスケールを帯びている。
特に心も身体もボロボロのオッサン期を井口組の常連・板尾創路が哀愁たっぷりに演じており、闘い続ける意味を問う構成は、正義について考えさせられ、感慨深い。
2部制の副作用として、ボリュームが膨らみ過ぎて、中盤のダルみがハンパない欠点が生まれたのもB級ムービーらしいが、それを差し引いてもこの2時間はちょっと長過ぎる感あり。
また柄本明演ずるマッドサイエンティストの狂気が全編に渡り強烈な故、脱力ギャグと大量に人が虐殺される血生臭さとの格差に戸惑う事もしばしば。
しかし、佐津川愛美や敵のアメフト軍団etc.女優陣のお色気サービスが小気味良く、ストーリーに立ち込める殺気を中和してくれるのが最大の救いとなっている。
特に大門のライバル兼恋敵ミス・ボーグを体当たりで演じた山崎真実の根性は特筆すべき活躍ぶりであると評しても過言では無い。
あの奇抜なコスチュームをそのまま着こなし、各地の上映キャンペーンに出陣したってぇから、彼女の勇気とバイタリティには脱帽である。
物語に飽きたら、彼女達の色気ある大立ち回りを追いかけてみるのも今作の粋な
楽しみ方ではなかろうか。
では、最後に短歌を一首
『決闘の 前に気になる 血糖値 愛にまたがり 悪を蹴散らせ』
by全竜