樺太1945年夏 氷雪の門のレビュー・感想・評価
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全国の中学、高校の学校で観せるべき映画
氷雪の門
今では、同名の札幌すすきのにある高級かに料理店の方が有名だろう
しかし本当の氷雪の門は北海道稚内の高台にある
8月の稚内は快晴であっても、半袖では肌寒かった
終着駅の稚内駅からほど近くにある
最北端の宗谷岬は駅から少し遠いが、もう一つの岬ノシャップ岬は近い
遥か彼方にうっすらと樺太の山並みが望める
日ソ中立条約破棄、対日参戦
敗戦、無条件降伏による停戦
しかし、ソ連軍は停戦せず侵攻を続け、その結果何が起こったのかを本作は描く
日本領土であった南樺太は阿鼻叫喚の地獄と化したのだ
それを樺太西海岸にかってあった真岡という都市の当時は電話局も兼ねていた郵便局を舞台に、電話交換手の若い女性達の目を通して描く
その運命は実話を基にしたものなのだ
稚内の高台にある氷雪の門と、皆さんこれが最後です、さよなら、さよならとある慰霊碑は、だからそれを伝えるものなのだ
実際に起こったことなのだ
組織だってソ連軍の侵攻から防衛しようとする陸軍も描かれるが、ポツダム宣言受諾を前にして手足を縛ったような抵抗しかできない命令が下される有り様も描かれる
積極的攻勢に出て越境すべからずと
そして終戦後も停戦を無視して侵攻が続く中、このような命令が届く
先に武装解除、軍旗奉焼につき指示したるも、自衛の為の戦闘はあくまで継続すべしと
これは平和憲法と言われる内容を先取りした命令だ
軍備、交戦権の放棄と自衛権の並立だ
その結果、一体何が起こるのか
どのような事になるのか
それが描かれている
つまり平和憲法は、本作で描かれたその時点で時を停めているといえる
極めて危険で国民の生命と財産を危険にさらして
逆に戦争を呼び込んでいることがよくわかるだろう
自衛隊も手足を縛られていざとなったとき、本当に国民を守れるのだろうか?
本作はソ連のクレームがついて、大手映画会社が配給から手を引いた幻の映画とされる
本当かどうかは諸説あるようだ
しかし、今でいう忖度が行われたのは疑いようもない
沖縄のひめゆりの塔は21世紀の今日でも、大きく取り上げられて人々に広く知られているが、この樺太そして北方四島におこった悲惨なこと、本作に描かれた真岡の電話交換手の女性達の悲劇は忘れ去られようとしている
全く不思議でおかしなことだ
全国の中学、高校の学校の授業として平和教育として本作を観せるべきだ
平和憲法とは何なのか
本当に国民を守るものなのか
逆に戦争を呼び寄せて国民を危険にさらしているのではないのか
それを考える機会になるはずだ
戦争するくらいなら殺されようという、夢想的平和主義者、平和憲法を守ろうと叫ぶ団塊左翼老人達の主張は一体どのようなことなのかを本作を観れば理解することができるだろう
それは、本作で描かれる、自衛する手段もなく殺されていく樺太の日本人の阿鼻叫喚の姿だ
それを彼らは21世紀の日本に呼び寄せているのだ
追記
1983年9月1日に発生した大韓航空機撃墜事件の現場は奇しくも本作で描かれた樺太真岡の上空だったのです
ソ連軍の戦闘機のミサイルでジャンボ機が撃墜され、乗員・乗客合わせて269人全員が死亡した事件です
その慰霊碑は氷雪の門のあるノシャップ岬の近くのもう一つの岬、宗谷岬の公園にあります
ソ連の圧力でお蔵入りになった、隠れた名作
真岡郵便局事件を描いている。
不可侵条約を破棄して突如侵攻を始めるという、いかに露助が卑劣なのか、そしてソ連から圧力をかけられ封印されたという怒り。本作を創った人たちの労苦を噛み締めながら観る。
大本営からの指示に反発し「なに?越境すべからず?」と怒鳴る丹波哲郎も必見。
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