日輪の遺産 : インタビュー
マッカーサーが残した財宝とともに、本作の象徴となるのは、勤労動員として召集された女子中学生20人だ。若い女性が20人もいる現場は「スタッフの方が気を使って控えの場所を変えてくださったんで、僕と獅童さん、福士さんユースケさんの4人は、職員室の先生みたいでした。子どもたちは学級で後の先生たちはそれぞれとおしゃべりをしているという感じでした」と話す。
軍人役の堺、福士、中村の3人に向かって敬礼をするというシーンで、中学生たちは一番好きな役者を見つめるように演出されたという。「後から福士さんに聞いてショックを受けました。そんな演出がされていたとは(笑)。みんな4人を均等に見ていると思ったので……もし真柴を見ている人がいたとしても、全然気づきませんでした」と照れ笑い。「一回みんなで、食事に行ったんです。服装の露出の多さにびっくりしました。まるで裸じゃないかって(笑)。(劇中の)もんぺに比べたら、水着でしたね」と、女子中学生のふだんの顔とのギャップに驚かされたようだ。
日本の未来に思いを馳せながら、真柴は少女たちに弾薬箱に入った財宝を壕へ運びこませ、そして終戦を迎える。堺はその後の財宝の行方について「物語として、まだ消化しきれていない感じがしたんです」と、撮影終了当時の心境を正直に明かす。
しかし、3月11日の東日本大震災により、日本人の誰しもが戦後以来の危機的状況を身を持って体感し、未だ終わりの見えない不安にさらされることになった。
「3月11日を経験してから、分かりやすい結論に落とし込んですっきり終わるものと、常に割り切れない思いを抱えながら、心のどこかに棘(とげ)の刺さっているような作品があってもいいんじゃないという気がしていて。その割り切れなさも含めて、まだ自分の中で日輪の遺産というのは終わってないんだろうなという感じがしているんです」と語る。
「それは自分の中で戦争を終わらせないと決断した真柴のそれにも似ていると思うし、真柴の白黒つけないという決断は、人として崇高な決断だったんだなという気がしているんです」。穏やかな笑顔が印象的な堺だが、日本の明日を信じて己の責務を全うした真柴と同様の、端然とした横顔がそこにあった。