「「山猿」? それとも「山バカ日誌」?」岳 ガク 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
「山猿」? それとも「山バカ日誌」?
同名人気漫画の実写映画化。
山岳救助隊を題材に、新人隊員・久美の成長と、何よりも山を愛する主人公・三歩の姿を描いていく。
小栗旬演じる三歩のキャラクターはユニーク。
常に笑顔を絶やさず、人懐っこく、山以外の事は疎い“山バカ”ぶりは「釣りバカ日誌」のハマちゃんのよう。
親友を山で亡くした暗い過去を持ちながらも、悲しみを背負って明るく前向きでいる姿には、映画の中で唯一無二の爽やかさを与えてくれる。
でも、それ以外は新鮮味ナシ。
山岳救助隊の知られざる活躍、厳しい訓練、終盤の大救出劇…何もかも某海上保安庁映画を山に置き換えただけに過ぎない。
ベタな演出、ストーリー、大袈裟な音楽もそっくり。
終盤の吹雪の中の救出劇が最大の見せ場なのだろうが、悲しいかな、「海猿」より圧倒的に迫力に欠ける。
また、山の高所感覚が全く感じられず、「クリフハンガー」のような緊迫感も皆無。
せっかく山岳救助隊を題材にしていながら、これは致命的。
突っ込み所が多いのも難点。
序盤、訓練について行けない長澤まさみ演じる久美は、救助隊員ではない三歩にレッスンして貰う。山岳救助隊ってそんなに自由なの?
中盤、スニーカーで登山して足を挫いた中年男に久美は叱咤するが、その直後自分が事故に遭う。コントかよ!
久美は命令を無視するし(未熟な新人隊員のくせに有り得ない)、主役二人以外の救助隊員の目立った活躍は無いし(驚愕するほど無個性)、そしてお馴染みの“絶望的状況の中、絶対助かる”というオチ。
この映画って、山岳救助隊の活躍を描いたアクション映画にしたかったの? それとも、山は素晴らしいという事を伝えたい人間ドラマなの?
もし、その両方なら、余りにも中途半端だ。
ベタな展開とリアリティの無い設定、それでもそこそこのアクションと泣かせようとする要素だけはある。
今の日本映画のヒットブランド?
でも、シリーズ化は無いだろうね。