「“そういう映画”と分かっていても……」ツーリスト 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
“そういう映画”と分かっていても……
ネタばれというか……
本作を気に入ってる方は
読み飛ばしていただければ……。
つい先日、その年に全米公開された映画の
中から最低作品を選出する、
いわゆるラズベリー賞が発表された。
今年の作品賞は『エアベンダー』が
受賞したが……
全米で去年公開された筈の本作が
ノミネートすらされていないのが、
僕には不思議でしょーがない。
ラブロマンスにしては
心の機微の描き方が大味過ぎるし、
サスペンスにしては
緊張感もヘッタクレも無いし、
アクションコメディにしては笑えない、
ヌル過ぎる映画に仕上がってしまった。
いや、ジョニー・デップはいい。
少し野暮ったくて頼りなさげな
三枚目な面と、優しくて白いスーツが
ビシッと決まる二枚目な面。
その両面をこうやって見せられる
役者さんはそうそういないと思う。
けどアンジーは……ゴージャスな感じは
良いんだけど、この映画ではもっと
か弱い感じが欲しかったような。
彼女なら男の数人くらい
軽くのしちゃいそうだもの。
何より“恋に揺れる女”に見えないので
ロマンスも心に響かない。
まあどちらも彼女のせいだけではないが。
主演二人の会話シーンも、
たぶん洗練された小粋な会話を狙った
のだろうが、単に回りくどかったり
たどたどしいだけの会話に聞こえる。
あの結末も……
まあそうなるよね、という感じで。
次に周りを固めるキャラ。
ティモシー・ダルトンだけは素敵だが、
ポール・ベタニーはじめ頭が悪すぎる
警察の面々といい、
クレイグ・シェファーの雑過ぎる扱いといい、
主演の二人以外は居て居ないようなもの。
マフィアのボス・ショーも悪役としては
まるで存在感不足。
メジャーで首を絞め、本棚を倒し、
女をナイフで脅し……
って、あんまり怖くないよ!
顔も仏様みたいに柔和だし!
そりゃ実際やられたら怖いが、
映画界では24年前にデニーロ
(が演じるアル・カポネ)が
食事中の相手をバットで
殴り倒したりしてるんですよ!?
あんなので相手を脅す悪の親玉って
何年前の発想だろ。
いや、分かっている。
この映画は主演二人の魅力と
美しいベニスの街並を楽しむ映画であり、
それ以外の要素は主演二人を引き立てる
添え物でしかない。
このレビューも頭でっかちな人間の
書いたレビューに過ぎない。
けど……退屈な映画だった。
申し訳無いけど、そう思えたんだから
しょうがない。
<2011/3/5鑑賞>