「スタローン御大は、憂いている」エクスペンダブルズ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
スタローン御大は、憂いている
「ランボー」などでお馴染みのアクションスター、シルベスター・スタローンが監督を務め、現代アクション映画界を牽引するジェイソン・ステイサム、ジェット・リーなどの俳優陣を招いて描く、ど真ん中アクション作品。
スタローン御大は、実は憂いているのかもしれない。自分の衰えを隠しきれない身体以上に、コンピューター加工や3Dの力に寄り掛かり、人間のもつ肉体の躍動を軽視する向きを見せ始めたハリウッドアクション映画界に。
まだまだ、筋肉ぶるぶる生身の拳だって捨てたものじゃない。そう心の底から信じているスタローン御大は、素晴らしい身体能力を秘めた肉体スターをかき集め、その可能性を知らしめようと企てた。それが、本作のもつ意味だ。
監督、脚本もこなした御大。当然、自分の大活躍を前提に物語を構築しても良かったはずだ。誰も文句は言わない。だが、本作にあって「スタローン」というスターは、敢えて裏方に回っている感が強い。
ちび、ちびと馬鹿にされながらも、その軽妙な身のこなしで敵をなぎ倒すジェット・リー。そして、とことん重々しい拳と蹴りに加えて、華麗なナイフさばきを披露するジェイソン・ステイサムを前面に押し出し、自分は保護者のように彼等の活躍を見守っている。
御大の熱い拳を期待している観客には、いささか物足りないかもしれない。だが、これは作り手が未来のアクション映画発展のために遺す一筋の光だ。どんなに時代が巡っても、技術が発達しても、肉体の可能性を信じろ。本気で、ぶつかれ。相手を殴れ。その情熱が支えてきた御大のキャリアが、受け継がれていくためには避けて通れない通過儀礼なのかもしれない。
光は、射した。思う存分殴って蹴れるオトコタチが、ここにいる。
筋肉は、肉体は、再びスクリーンで躍れるか。勝負は、これからだ。