劇場公開日 2011年2月26日

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「形骸化した民族性にぶらさがって、」シリアスマン あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0形骸化した民族性にぶらさがって、

2011年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

難しい

2009年アメリカ映画。106分。今年8本目の作品。1年以上前にアメリカで公開されていたコーエン兄弟の作品がようやく日本初上陸。しかもこれを観に行った当時では公開されていた映画館が渋谷にあるヒューマントラストシネマだけでした。

内容は;

1、時は1960年代後半、大学教授の主人公は人生を無難にこなし、妻子もちのごく平凡な人生を過ごしていた。
2、そんな彼の元に妻が離婚の申し出をしてくる。
3、不幸の防波堤が崩れたかのように、それから彼に災難が押し寄せてくる。

公開前からこれまでのコーエン兄弟の作品のなかでも本作はかなり難解だという評判どおり、本作の肝を理解するのはとても難しかったです。というのも、本作の底に流れている題材はユダヤ民族についてであったりするからです。

ところが本作はなかなか魅せるんですね。それはひょっとしたら、これまでのコーエン兄弟の全作品を観てきて、スタイルの変遷を知ってるからこそ分かるおもしろさなのかもしれません。

冒頭の意味不明なおとぎ話ちっくな中世の逸話は意味が分からなくても笑えるし、主人公をとりまく人々の描き方もコーエン兄弟ならではのシニカルな笑いがあって退屈しない。みんな善良な心の持ち主であるかのように振舞うが、どこか嘘っぽい。そんな人々が織りなすコメディ群像劇。本作の魅力はこれだと思います。

たぶん、本作の描かれている1960年代後半から民族性というものが形骸化していく様が1つのテーマのように感じる。形だけで民族性にぶらさがってても、それを実行出来る人間がいつだって偉いのだが、とにかく嘘っぽい。そう考えると今の自粛ムードってちゃんちゃらおかしい話です。

しかし、これだけで終わらない広がりが、本作のようなこじんまりとした作品なのに感じさせられるのはやはりそれ以上の力があるのだと思う。

このDVD、買っていいかも。

あんゆ~る