「『ロミオとジュリエット』が、双方の親類縁者に祝福されてハッピーエンドとなるような終わり方。」エクリプス トワイライト・サーガ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
『ロミオとジュリエット』が、双方の親類縁者に祝福されてハッピーエンドとなるような終わり方。
もし禁断の恋と三角関係の抜き差しならぬ関係が、あっけらからんとハッピーエンドに終わったらがっくり来るでしょう。本作は3部作まで引っ張っておきながら、何だという期待はずれな終わり方をして、がっくり来ました。
例えば『ロミオとジュリエット』が、双方の親類縁者に祝福されてめでたく結婚をあげたら観客の皆さんはどう思われるでしょうか。例えば『冬のソナタ』でちょっとよろめいたポーズを見せながら、あっという間に私こっちにするわと、あっさり決断してしまったら、興ざめになりはしないでしょうか。
結局終わってみれば、ベラとエドワードの恋物語を、途中にエピソードで膨らませて水増しし、何とか3部作に仕立てたところが見え見えなんですね。
第一作は、それでも草食パンパイアと人間の恋という設定がミステリアスでよかったのです。まぁ2作目もふたりの関係に波乱があって、ジェイコブという恋敵も登場して、まぁまあかなと思いました。けれども、3作目になってエドワードに決めているのにもかかわらず、ジェイコブと自らすすんでキスをするなど、揺れるベラの気持ちが全然理解できません。
さらに禁断の恋物語だけではネタ不足だったのか、バンパイア部族と他部族の抗争を取り入れて、SFスペクタルとしての要素が3作目では濃くなっていったのです。しかし、こちらも敵役の部族が弱すぎて、早々に決着がついてしまいます。スペクタルとしても中途半端ではないでしょうか。
それと登場させる部族が多すぎます。エドワードの草食パンパイア一族の他に、パンパイア族を統括するヴォルトゥーリー族、さらに今回はヴィクトリアが速成で軍団を構築するために、次々人間を襲ってパンパイアに仕立てた、ニューボーン軍団。そしてパンパイアと永年抗争してきたオオカミ族らが入り乱れるので、登場人物も多くなり、対立軸が見えにくくなってしまいました。
そして不思議なことに、娘をパンバイアにさせられてしまうベラの友人や親族たちがまるで介入してこないのです。本来なら、ベラを巡って人間族対パンパイアの激しい戦いとなっても可笑しくないのに、父親も含めて物わかりのいい人間ばかりです。
パンバイアと結婚すると言うことは、魂を抜かれて、人間としては死を意味します。それを知ったなら、ベラの親族友人は必死で引き留めるでしょう。エドワードがイケメンで、いくら惚れ込んでも、人間でなくなってしまうことについては、ベラに恐怖感とか躊躇する気持ちがあってもおかしくありません。けれども、本作では時々ジェイコブによろめきつつも、ひたすら自らパンバイアになろうとベラは決意を固めるのみです。その理由として、なぜかベラは厭世感を持っていて、早く嫌なことからおさらばしたくて、パンバイアになりたいとエドワードに打ち明けるのです。しかし、ベラのどこにも厭世感に繋がる影の部分が見当たらないのですね。だからパンバイアになりたがるベラの気持ちが理解できませんでした。
むしろ人間と同じ熱い血が流れているジェイコブを選んだ方が、人間として生きられるのでその方が、賢明ではなかったかと思うのです。実際には、ジェイコブのことも愛していたし、ベラの父親もジェイコブと結ばれることを望んでいたわけですからね。
結局、第一作で時めいた観客も、本作では蛇足を魅せられるようで、興ざめされる人が大半ではないかと思います。但し、イケメン俳優が続出するところでは、見所がないわけではありませんが・・・。