劇場公開日 2011年1月7日

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「『CSX8888号暴走事故』」アンストッパブル(2010) かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『CSX8888号暴走事故』

2025年6月10日
iPhoneアプリから投稿

監督は『トップガン』のトニー・スコット。
主演デンゼル・ワシントン、
2001年、オハイオ州で発生した、通称"クレイジー・エイツ(Crazy Eights)"列車事故をモデルにした作品。

【ストーリー】
ペンシルバニア州。
アレゲニー・アンド・ウェストバージニア鉄道フラー操車場。
無人のハイパワーディーゼル機関車・777号車が、貨車を牽引したまま、コントロール不能の状態で走行してしまった。
コンソールの操作ミスでレバーはフルスロットル、777号車は最大加速状態。
列車にはディーゼル機関燃料が満載され、さらに貨物として、大量の化学物質・溶融フェノールが積みこまれていた。
路線は都市部で大きなカーブがあり、そこは住宅や学校の密集地になっている。
州警察による通行規制、そして脱線器による強制停止作戦の失敗で、777号車はリアルタイムにマスコミの耳目を集めてしまう。
パニックにおちいる鉄道会社と事故対策本部。
衝突する会社上層部と現場監督。
そこに、旧式ディーゼル機関車1206号車を駆り777号車を追う、ベテラン機関士と新米車掌から、通信が入る。
「俺たちが後ろから貨車に連結して、あいつを止める」

実在の事故をもとにした、トニー・スコット監督の佳作パニックアクション。
デンゼル・ワシントンとのコンビで鉄道っていうと『サブウェイ123激突』を思いだす方もいるはず。
展開は早くてわかりやすく、ストーリーも一直線で、画面の迫力もドカンと重量感たっぷりにド派手。
キャラクターのつくり方や演出は、わかりやすさ重視のトニー・スコットスタイル。
画面の中でだれかが発言すると、ちょびっとアップになるの、お兄ちゃんのリドリー・スコットの『GIジェーン』思いだしますね。
発砲すると、一瞬画面がちょびっとアップになってもどるやつ。
マンガの集中線っぽいなって。
ディーゼル機関車で暴走列車を追いかける二人、機関士は一人はぼくらハゲのかがやける兄貴弐号機、デンゼル・ワシントン。
今回はおなかの出た、解雇通知をうけとったばかりのロートル機関士。
そして二人の娘さんは今はなきお色気ダイナー、フーターズ勤務。
もう一人の車掌には『エージェント・ライアン』のクリス・バイン。
アメリカ作品でよくある、機能不全家庭になやむ旦那さん役。
どっちも現場のブルーカラーを好演してます。

さて、このクレイジー・エイツ暴走事故、鉄道事故としては、大惨事を回避できた数少ない事例。
『ハドソン川の奇跡』を思いだす人もいるかも。
Wikipediaをのぞいたら、英語版には細部までびっしり説明してくれててすごく便利。
でも日本語版は、英語版の翻訳にくわえ、この映画との関連項目も充実しててさらに便利。
日テレの『世界一受けたい授業』に、実際の機関士さんを呼んで、講師してもらってたみたいです。
やばいなー見たかったなーそれ。

描写としては、上層部からのコスト削減要求による安全軽視、からの事故発生。
『ディープウォーター・ホライズン』とおなじ構造ですね。
実際の事故の方では、車両そのもののレバー配置やこまかなフェイルセーフの不備による、エンジニアリング問題も指摘されてます。
どうにかこうにか惨事にいたらずにすみましたけど、
「こんな事例はめずらしくない」
じゃなくて
「こんな安全意識の低さで、今なお事故は起きてるんだ」
っていう方に、経営者ふくめ、鉄道関連会社は考えを改めてほしいです。
ええ本当に。

素人がえらそうに言いましたけど、現場からは以上です。

かせさん