コロンブス 永遠の海のレビュー・感想・評価
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知的探求の旅へ
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100歳を超えた今でも精力的に新作を製作し続けているオリヴェイラ監督のその原動力はどこから来るのだろう?本作を観れば、強い知的探求心を感じる。この探究心こそが、監督の原動力なのだ。
そんなオリヴェイラ監督の分身のような主人公は(実際に主人公の老年期を演じるのは監督本人なのだが)、イタリア人もしくはスペイン人であるとされてきたコロンブスは本当はポルトガル人だという新説を究明すべく、コロンブスの軌跡を追う旅をする。映画を観る楽しみの1つとして、日本にいながらにして、世界中の行ったこともない場所の様子を知ることができるということがある。本作ではポルトガルの田舎の風景を楽しめる。昔ながらの佇まいを残した田舎町、荘厳な協会、そして美しい海。物語はとりたてて大きな事件が起きずに淡々と進む。だからこそ、リアルな「一般人としての観光旅行」を安心して堪能できるのだ。本作の魅力はもう1つ、我々の知らない、新大陸を発見する前のコロンブスの生活を垣間見ることのできるなどの、豊かな教養を身につけられる。主人公と一緒に我々の知的探求心も満足させてくれる映画はそうはない。
さらに本作には深い夫婦の愛情が描かれている。ドラマティックなロマンスは無いが、互いに信頼しあい長年連れそう夫婦の暖かさ。主人公の老年期を演じる監督夫婦の、四半世紀以上連れ添った本物の信頼感。コロンブスの愛した海のように深い愛が暖かい。ラストシーンでは、その穏やかな海に重なるオエイヴェイラ夫人の歌声。高齢にしてこの澄んだ声には驚かされる。
美しい映像と歌声、深い愛情と豊かな教養。監督の知的探求はまだまだ続く。
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