「怒涛の映像体験」スター・トレック イントゥ・ダークネス マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
怒涛の映像体験
真っ赤な惑星“ニビル”でカークとマッコイが原住民から逃げ惑うシーンで始まる。なぜ、そんなところにいて、なぜ逃げているのかさっぱりわからないまま、映像の“凄さ”にただただ圧倒される。カメラワーク、スピード、3D処理、すべてに於いて次元が違う。あっという間に新スタトレの世界に取り込まれてしまう。
しかも、この数分のプロローグで登場人物の性格や置かれたポジションまでも描き切ってしまう演出と無駄のない編集に、J・J・エイブラムスの底力を見せつけられる。
また、シリーズの主人公であるカークとスポックを使わず、悪役ジョン・ハリソンをソロで使ったポスターが潔い。作品の内容と同じく制作陣の勢いを感じる。
ベネディクト・カンバーバッチが、悪役ハリソンを期待以上に演じてみせる。この悪役は他の作品も含めて、ルックス、狡猾さ、非情な戦闘能力、どれをとってもここ10年のなかでもトップクラスだ。
それでいて、クリス・パイン演じる若き艦長カークが主人公であることが揺るがない。これは、前作以上にリーダーとは何かというテーマを芯に据えたからだ。カークもハリソンも仲間をリードする資質を備えている。その二人の違いを解いていくと、雲間から傷手を負ったエンタープライズ号が再浮上するように、満身創痍のカークもまた大きく成長する。
カークには、父親のように見守りよき理解者であるパイク提督と、少々理屈っぽいがスポックというよき友がいる。
音楽は前作に続きマイケル・ジアッキノだが、アレクサンダー・カレッジ作曲の「宇宙大作戦のテーマ」をモチーフに、映画オリジナル版を担当したジェリー・ゴールドスミスばりのアレンジをフィーチャー、この音楽を聴いただけで★1個分の価値あり。