「タンタニアンの夢を裏切らない快作」タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密 cmaさんの映画レビュー(感想・評価)
タンタニアンの夢を裏切らない快作
十代からのタンタニアンとしては、「踏み絵」の本作。周囲には「ツルンとしたデジタル画像がイヤ。絶対観に行かない。」と宣言していたものの…スピルバーグ×ジェイミー・ベル(「リトルダンサー」である以上に、「ジャンパー」「DEAR WENDY<ディア・ウェンディ>」、実は「デス・フロント」の彼!)の魅力に屈し、2D字幕版に足を運んだ。
…結論。タンタンの映像化としては、現時点で最上の選択では?と思う。全編通じ、素直にワクワクと楽しめた。もちろん、原作にこだわれば多少の不満は残る。タンタンの愛すべき相棒であるスノーウィにも喋ってほしいし、ハドック船長の十八番「コンコンヤローのバーロー岬!」が登場しないのは寂しい(翻訳権の都合上?)。ひらめきで突っ走るタンタンだけでなく、ぐるぐる歩き回りながら推理を深めていく姿も見たい。(余談となるが、ダニエル・クレイグが演じたサッカリンの声は別人だろうか?クレイグの声はもっと低く、むしろ悪役向きだと思うが…。)とはいえ、色鮮やかかつ細やかに描き込まれたエルジェの原画を彷彿とさせる豊かな情景がスクリーンいっぱいに広がり、登場人物の目線とともに場面が展開し、生き生きと躍動するさまは、デジタルCG、パフォーマンスキャプチャーならでは。実写では生々しすぎるし、従来アニメでは紙芝居のようになってしまう。コミックならではの表現を、映画ならではの表現に編み直す手腕はさすがスピルバーグ、と感じた。
さらには、つくり全体が上品で、やりすぎ感がない。こじゃれたタイトルロールからスマートに物語は幕を明け、街から海へ、異国へと膨らむ冒険活劇は、しっかり2時間弱におさまっている! さらには、続篇の存在をにおわせつつも特典映像(予告編)なし。つくづく潔い。次回作こそビーカー教授が登場し、歌姫カスタフィオーレ夫人とも絡んでくれることを期待したい。
…老境に差し掛かったスピルバーグといえども、「タンタン」はキャリアの無駄じゃないと思います、蓮實さん。
原作シリーズは、福音館書店から発行されています。コミック(マンガ)ですが、児童書(絵本)コーナーにあるかと思います。日本版は、手描きレタリングの文字が絵にぴったりの味わいで、素敵です。ぜひ手に取ってみてください。