「↓金返せなんて酷いコメントに惑わされずに、ご覧あれ!アンジーのアクションの凄さと、ホロリと流す涙に感動するかも知れませんよ~。」ソルト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
↓金返せなんて酷いコメントに惑わされずに、ご覧あれ!アンジーのアクションの凄さと、ホロリと流す涙に感動するかも知れませんよ~。
多くのレビューが、トム・クルーズ主演から書き換えられたことを問題視するものが見受けられますが、数多くのアクションをスタントなしで体当たりしたアンジーの気迫が感じられて小地蔵的には、見応えありました。
冒頭からCIAから二重スパイに見せかけられて、派手な逃走劇へと発展させるなど、アクションのテンションが落ちない所がいいです。確かに、二重スパイのように見せかけるトリッキーなストーリーのため、ソルトの立ち位置が二転三転したかのように見えるストーリーは、わかりにくくて、彼女の気持ちは掴みづらいということは感じました。
また、ストーリー上で突っ込みどころも満載です。例えば、ソルトにするとどんな屈強なエージェントやシークレット・サービスもイチコロになってしまうのは弱すぎだとも言えます。アンジェリーナ・ジョリーだから、主役は強いのだというしかありません。でも観客はそれを求めているのだから、いいじゃありませんかね。『暴れん坊将軍』のようにお決まりで、スカッっとさせられたほうが。むしろ今日テレビで見た『トームレイダー』のほうが、CGてんこ盛りで、つまらなかったです。なんだかお子様向けの怪獣映画の要だったりして、興ざめでした。他にも、いろいろあります。なかでも、ロシアのスバイたちは、なんで自国の大統領を暗殺してまで、アメリカを壊滅に追い込みたいのか疑問に残ります。余りに回りくどい方法ではないでしょうか。スパイなら、もっと手っ取り早い方法を思いついて当然でしょう。
ただ本国と連絡すら取らずに一般人として敵国で暮らす「スリーパー」スパイの存在については、面白い設定だと思えました。まるで拝一刀を悩ませた柳生の「草」のような存在です。戦国時代でもない現代に普通ならあり得ないと思うところですが、最近ロシアのスパイが摘発されたニュースが流れたので、果然このようなストーリーにも説得力を感じてしまいました。そういう意味では、ワンパターンで中東のテログループを登場させるのでなく、ロシアのスパイにスポットを当てたところがタイムリーであった思います。
ソルトの立場が二転三転するように見える複雑なストーリーも、愛することを殺されたことに対する一途な復讐劇と見れば、凄くストーリーが見えてきます。行き着くところは、ソルトが見せる悲しみの涙でした。愛する人を面前で殺されて流すあの涙は、ごまかしようがなかったのです。そしていつも愛する人のことを語ったり、回想するときのソルトの表情は、ほんのちょっと緊張した表情が緩んでいました。見過ごせないところです。
裏切りと殺伐とした殺しのシーンが続いても、何かしら後味がいいのは、ずっとソルトの愛を感じていたからではなかったかと思えます。
スパイとして育てられて、ずっと刹那に人生の無常と向き合ってきたソルトが掴んだ、普通の幸福も、ハードボイルドにかかると、何のためらいもなく、あっという間に奪われていきます。ハードボイルドとは、そんな空しさをウリにしているものなのでしょうか。身も蓋もなく、主人公に降りかかる不幸を楽しんでしまうものなのでしょうか。思わずソルトに同情してしまいそうになりました。
そんに薄幸な主人公を、アンジーは好演していると思います。バッタバッタと敵を倒していくの無表情さが、ハードボイルドの女主人公として相応しいと思うのです。下手にヒーローぶっていては興ざめです。
そして目力が強いことが魅力をアップさせています。本作を見ていると、そこらのカワイコちゃん女優とは違う、凄みを感じるのですね。アクション女優としての面目躍如です。目をカット見開き、頬をごっそりそぎ落とした無表情には、凄みと共にある意思の力を感じずにはいられませんでした。それでいて、どことなく希望を見失っている主人公の絶望感というか、底なしの虚無も感じさせる演技なのです。ゴルゴ13も実写版で誰かが演じれば、かくのごとき表情なってくることでしょう。
続編もあり得る終わり方なので、ソルトの復讐の完結編をぜひ見たいと思います。