「【”剣を使う際には、半ば死んでおりましょう・・”と藩の行く末を憂う武士は言った。藤沢周平の善ある人間を描いた世界観を可視化した、現代ではナカナカ観れない心に響く時代劇である。】」必死剣鳥刺し NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”剣を使う際には、半ば死んでおりましょう・・”と藩の行く末を憂う武士は言った。藤沢周平の善ある人間を描いた世界観を可視化した、現代ではナカナカ観れない心に響く時代劇である。】
■私事で恐縮であるが、藤沢周平の作品は、名もなき市井の民を描いたモノから、海坂藩を舞台にしたモノまで、総て読破している。
そして、数は少ないが、藤沢周平の作品を原作とし映画化された作品は、皆、面白い。
何故なら、そこには藩の行く末を憂いながらも、武士社会で生きる、武士の姿が確かに描かれているからである。
◆感想
<内容は巷間に流布しているので、印象的な事のみ記す。但し、内容に触れています。>
・兼美三左エ門(豊川悦司)が、藩の行く末を想って身命を賭して行った事。そして、愚かしき海坂藩君主(村上淳)を諫め、彼の助命を嘆願する中老、津田(岸部一徳)の真意。
ー 会社勤めをしているものには、心に響く。武家社会は、もっとキツカッタのだろうな。出世と保身。だが、三左エ門の姿が崇高なのは、そんなことに囚われず、只管に藩を想う姿が伝わって来るからである。-
・三左エ門が津田の箴言もあり、斬首から閉門に減罪されたシーン。彼を支えたのは、三左エ門の故妻(戸田菜穂)の姪である里尾(池脇千鶴)であった。
ー 彼女は、三左エ門の食事から、湯あみの際も、背を流す。徐々に二人の想いが募っていく。-
・愚かしき海坂藩君主を諫めるために、遣って来た剣の達人、御別家(吉川晃司)。彼を迎えるのは同じく剣の達人、三左エ門。
ー 同じ、藩の行く末を思っての二人の剣術シーンは見応えがる。-
・そして、決死の思いで御別家を斃した三左エ門に対し、中老、津田が発した一言。
ー 組織で、ソコソコの地位に上がるのは、こういう狡猾な輩である。-
<三左エ門の命を懸けた最後の斬り合い。そして、皆が初めて見た”必死剣 鳥刺し”。
ラスト、三左エ門の帰りを待つ、里尾の姿が切ない。
今作は、真の漢とは、どの様な人物なのかを、若き昔、学んだ作品でもある。>