「生真面目な主人公の際立った存在感」武士の家計簿 CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
生真面目な主人公の際立った存在感
幕末に加賀藩に実在した「そろばん侍」と呼ばれるお家柄の一家が借金を返済して行く事を縦軸に、家族の交流を描いた作品。
公開時以来の再見だが、面白い題材を手堅くエンターテインメントに仕上げている。本作のヒットを受けて製作された『武士の献立』の後に見ると、改めて『献立』の出来の悪さを実感できる。
主人公(堺雅人)と父親(中村雅俊)の一家の借金について、一緒に見た家人に質問されたので、一応、ここで書いておく。インフレの激しかった幕末であり貨幣価値や、そもそもの経済原則が違うので、あくまでもざっくりとしたイメージだが、主人公と父親の二人の収入が、今の価値基準で500万円くらい。その中から、家族4人プラス子供と、女中や小間使い、合計10人程度を養い、かつ父親が江戸に出る際の経費などを賄う。それに対して借金は1000万円。正確な計算ではないが、大凡そんなイメージ。
これでも、「知行取」であり「大名お目見得」という上流階級(あるいは中流の上)。江戸の中期以降、武士階級が如何に経済的に困窮していたか。まぁしかし、その一方で、借金帳消しや年貢の不当徴収なども横行していたわけで、武士階級が特権的階級だったことは間違いない。逆に言えば、そんな階級でありながら、生真面目に借金返済した主人公の存在感が際立つ。
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